F1はタイヤの切れ角も特殊! 市販車とは真逆で内側より外側タイヤが大きく切れる理由

この記事をまとめると

■F1マシンは左右のタイヤの切れ角が異なる

■グリップ力を最大限稼ぐために「アンチ・アッカーマンステアリング」機構を採用する

■ポルシェなどでは左右のタイヤが同じ舵角になる「パラレルステアリング」を導入している

F1のステアリング機構は超特殊!?

 F1中継の車載カメラの映像を見ているとき、コーナリング中、ハンドルの切れ角に違和感を覚えることはないだろうか? というのもヘアピンなど、大きな舵角が必要なコーナーで、よく見ると左右のフロントタイヤで、舵角に違いがあるからだ。

 とくにアンダーを出して曲がりきれずにコースをはみ出す直前の映像だったりすると、「あれ、もしかしてタイロッドが壊れてアンダーを出したのか? 」と思ったりするかもしれないが、じつはF1マシンでは、ハンドルを切ったときに、内側のタイヤに対し、外側のタイヤがより大きく切れる(舵角が大きい)のがスタンダードな仕様になっている。

 これは「アンチ・アッカーマンステアリング」と呼ばれる仕組み。

 わざわざ「アンチ」とついていることからもわかるとおり、普通のクルマは「アンチ」ではない「アッカーマンステアリングジオメトリ」を採用している。

 なぜかというと、コーナリング中、内側のタイヤと外側のタイヤでは旋回する半径が違うので、もし前輪左右の切れ角が同じだとすると、トレッドの長さ分だけ、左右輪の旋回中心にオフセットができ、前輪内側のタイヤの旋回中心が、より内側になり、結果として前輪外側の軌跡はより内側に向かい、前輪内側の軌跡はより外側に向かうので、それが抵抗になりスムースなコーナリングを損ねてしまう(=曲がりづらくて、タイヤも摩耗しやすい)。

 そこで市販車ではナックルアームの角度を前開きにして、ハンドルを切ったときに内側輪が外側輪より大きく切れるようにして(アッカーマンステアリング)、コーナリング中、4つのタイヤの旋回中心が同じになるように設計するのが標準だ。

 しかし、中低速域ではこれでOKだとしても、F1マシンのようにコーナリング速度の速さが最優先の世界になると事情が変わってくる。

 F1マシンは最大5GものコーナリングGが発生していて、そのぶんだけ、外側のタイヤに大きな荷重がかかっている。タイヤのグリップ力は荷重の大きさに比例(F=μmg)し、よりマシンを曲げるには、外側のタイヤに仕事をさせたい。

 また、コーナリングフォースはある領域まで、スリップアングルが増えるほど大きくなり、その最適なスリップアングルは、タイヤにかかる荷重が増えるほど大きくなるので、F1マシンでは、外側タイヤの切れ角を多くして、少しでも多く旋回性能を稼ごうというわけだ。

 F1がアンチ・アッカーマンステアリングを採用するのはこういう理由だ。

 アンチ・アッカーマンステアリングにすると、直進時や低速域での抵抗が増え、低速域でハンドルを切るとタイヤを少々引きずったり、タイヤの摩耗が早くなったり、といったデメリットもあるが、F1マシンは摩耗よりパフォーマンス優先!

 余談だが、ロードカーでもポルシェなどは、左右のタイヤが同じ舵角になる「パラレルステアリング」を採用。アッカーマンとアンチ・アッカーマンの中間を狙っているはずで、燃費やタイヤの摩耗と引き換えに、高速域でのコーナリングフォースや、フロントタイヤの温まりのよさ、ハンドルの手応えのよさなどは、アッカーマンステアリングの普通のクルマより良好なものを得ているはずだ。


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藤田竜太 FUJITA RYUTA

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