この記事をまとめると
■ポルシェ930ターボは長年4速MTを採用していた
■ターボパワーに対応する強度確保のため通常の911用5速MTを流用できなかった
■1989年には専用設計の5速MTが登場した
伝説の「ポルシェターボ」のナゾ
スーパーカーブームの時代、ポルシェ911(930)ターボは、当時の子どもたちを魅了したモデルのひとつでした。左右に大きく張り出したリヤフェンダー、巨大なリヤスポイラー。フェラーリBBやランボルギーニ カウンタックなど、ワイド&ローのスーパーカーに引けを取らない迫力のボディ。運よく高速道路で見かけたときの異次元の加速。
国産チューニングカーに乗るオーナーにとっても、「ポルシェターボ」は絶対的な王者であり、いつか倒すべき相手。もはや畏敬の念を抱かせるほど別格の存在だったのです。
しかし、長きにわたり、ポルシェ911(930)ターボに搭載されていたトランスミッションは4速MTのままでした。フェラーリやランボルギーニが5速MTを当たり前のように搭載していた時代に、なぜポルシェはポルシェ911(930)ターボに4速MTを採用し続けたのか。今回はその理由を掘り下げてみます。
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●そもそもポルシェ911(930)ターボとはどんなクルマか?
ポルシェ930型は、911に初めてターボエンジンを搭載したモデルとして1975年にデビューしました。KKK製ターボチャージャーを組み合わせた空冷水平対向6気筒エンジンは当初260馬力を発生し、最終的には300馬力にまで引き上げられています(フラットノーズ仕様をはじめとする当時のワークスチューンモデルは330馬力まで引き上げられた例も)。
当時としては驚異的なパワーですが、同時にポルシェ911(930)ターボは「乗り手を選ぶ」クルマでした。低回転域ではターボが利かず、回転が上がると突然ターボが利きはじめることで強烈な加速に変わる「ドッカンターボ」と呼ばれる特性をもっていたのです。さらにRRレイアウト特有の挙動と相まって、限界付近でのコントロールは非常にシビア。その過激さゆえ、とあるポルシェのメカニックをして「ターボは人間では御しきれない。戦車だよ」といわしめたほどです。
ポルシェ911(930)ターボ 画像はこちら
ABSやトラクションコントロールなどの安全装備が搭載される前の時代であり、乗りこなすにはこのクルマの特性を理解し、ポルシェ911(930)ターボに合わせた技量が求められたのです。「ポルシェ遣い」という言葉が生まれたのも、ポルシェ911(930)ターボの存在が大きく関係していることは確かです。
●そもそもポルシェ911(930)ターボは、なぜ4速MTで登場したのか?
初期の3リッター仕様は最高出力260馬力、最大トルク343Nmを発生しました。1978年モデルでは排気量を3.3リッターに拡大するとともに、インタークーラーを採用。最高出力は300馬力、最大トルクは412Nmに達しています。注目したいのは、こうした高出力化に対して、トランスミッションは長きにわたって4速のままだったことです。
そこには強大なエンジン性能を受け止めるための技術的な事情があったのです。当時のNAエンジンの911には、5速MTが用意されていました。しかし、ターボモデルには通常の911と同じトランスミッションをそのまま採用することができませんでした。ターボエンジンが生み出す強大なトルクを確実に受け止める必要があったからです。
つまり、ポルシェ911(930)ターボの4速MTは、単に通常の911からギヤをひとつ省いたものではありません。ターボエンジンに対応するための専用トランスミッションだったのです。
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エンジンの出力が大きくなるほど、ギヤや軸、ケースなどにかかる負荷も大きくなります。とくにターボエンジンは、過給圧が立ち上がったときに大きなトルクを発生させるため、トランスミッションにも相応の強度が求められます。ポルシェ911(930)ターボの最大トルクは、初期型の343Nmから3.3リッター仕様では412Nmにまで増加しました。これほどのトルクを受け止めるためには、通常の911用5速MTをそのまま流用するのではなく、ターボ用として十分な強度を確保する必要があったのです。