WRCで活躍した精鋭の2WDマシン(1973-1982)

2輪駆動全盛期にWRCに挑んだチャレンジャー

 ドライバーの世界一を決めるF1GPと、クルマの世界一を決めるスポーツカー世界選手権(WSC)は、ともに1950年代序盤に始まっているが、ラリーの世界一を決める世界ラリー選手権(WRC)が始まったのは1973年。もちろん、それ以前から、例えばモンテカルロ・ラリーは1911年から開催されていたが、それを世界的に組織立てたシリーズとしてWRCが73年に制定された、というわけだFIAが統括するようになりレギュレーションも統一されたが、当初はグループ2やグループ4など、市販車をベースにチューニングしたラリーカーが主役だった。

  

★コンパクトなボディに高出力エンジンは教科書通り★
1973 Ford Mod.Escort RS 1600 Twin-Cam & 1977 Ford Escort RS

 戦前に設立された英・独フォードが統合されヨーロッパ・フォードが誕生した1967年にデビューした、小型乗用車がエスコート。リジッドのリアアクスルをリーフスプリングで吊る後輪駆動、と一見何の変哲もない大衆車だったが、ラリーカーとしてのポテンシャルは高かった。ベースモデルは1.1リッターと1.3リッターの直4OHVだったが、スポーツモデルとしてコスワース製の1.6リッターBDAを搭載したRS1600が登場。75年には2代目に移行しRSも1.8リッターから最終的には2リッターまで拡大され、各地のラリー競技で大活躍している。初代RSはイタリア北部のグラットン博物館で、ロスマンズカラーの2代目RSはフランス北西部、ロエアックにあるマノワール自動車博物館で撮影。ph080103_1977_Ford Escort RS Groupe 4_IMG_0887

★サソリの魔力で手強いラリーカーに★
1974 FIAT 124 Abarth Rally & 1976 FIAT 131 Abarth Rally

 クルマを作ったのはドイツで、工業製品としたのはフランス。そしてそのクルマを楽しんできたのはイタリア、とはよく聞くフレーズだが、イタリアのトップメーカー、フィアット社の製品を見ても、多くのクルマがラリーカーのベースになっている。それは国民性だけの問題ではなくアバルトという優秀なチューナーがいたからに他ならない。お洒落でスポーティな124スパイダーも、平凡な4ドアセダンの131も、アバルトの手にかかると手強いラリーカーに生まれ変わる。特に131はマニュファクチャラーズで3度も戴冠した傑作だった。124スパイダーは北イタリア、ロマーノのフィマール自動車博物館で、131は高知県香南市の四国自動車博物館で撮影。

FIAT 124 Abarth Rally
FIAT 124 Abarth Rally
FIAT 131 Abarth Rally
FIAT 131 Abarth Rally

★ラリーカーにここまで徹底するのはランチアのDNAか★
1974 Lancia Strato’s

 1969年にフィアット傘下に入ったランチアが、ラリーで勝つために生み出したクルマがストラトス。2座クーペでキャビン背後にエンジンを搭載するミッドシップ・レイアウトを採用。そのエンジンはフェラーリ・ディーノ246GTに搭載されていたのと基本的に同じ4カムのV6エンジンだが、ラリーで威力をより発揮しやすいように中低回転域のトルク特性を考えてチューニングし直されている。またホイールベースが短いことでクルマの回答性が高まっており、これもラリーカーとして大きな武器となっている。74年のサンレモでWRC初優勝を飾り、同年早くも王座に。アリタリアカラーの現車は、トリノで開催された2015年のアウト・モト・レトロで撮影。ph080301_1974-75_Lancia Strato's Rally Spec._IMG_4601

★小排気量ながら軽さとFWDのトラクションを武器に活躍★
1968 Saab Sport 96V4

 航空機や軍需品のメーカーとして知られるサーブが、戦後になって自動車産業に進出、1950年には2サイクルエンジンで前輪を駆動する92を発売している。その92の発展モデルとして60年に登場したのが96で、当初は92と同様に2サイクルエンジンを搭載していたが、67年にはフォード・タウナス用の4ストロークV4エンジンに換装した96V4が登場している。2サイクル時代よりはパワーアップしていたものの絶対的にはまだ非力だったが、軽量なボディと熟成されたハンドリングを武器に、モンテカルロやRACラリーで連勝を飾っている。エスコートの2代目RSと同様にマノワール自動車博物館で撮影。この個体がラリーに参戦していたかは不明。ph080401_1968_Saab Sport 96V4_IMG_1225

★美しくて乗り心地がいい、だけじゃなかった504クーペ★
1978 Peugeot 504 Coupé V6 Groupe 4

 フランス車は概して乗り心地がいいと定評がある。1968年に登場したプジョーの中型セダン、504も例外ではなかった。前身の404では後輪がリジッドだったが、この504では4輪独立懸架を採用していたことも、関係していたのだろうか。またデザインをピニンファリナが手掛けたこともあって、スタイリングも美しいと評判になった。しかしルノーやボルボと共同開発したV6を搭載、グループ4規定に則ってチューニングされたラリーカーは、特にアフリカ大陸で威力を発揮、サファリラリーでも75年と78年の2度、総合優勝に輝いている。写真は78年にJ-P.ニコラがサファリラリーで優勝したクルマそのもので、プジョー歴史自動車博物館で撮影。ph080501_1978_Peugeot 504 Coupe V6 Rallye_IMG_2103


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