【70年代のF1マシン】マトラエンジンを積んだフランスチーム (2/3ページ)

「大人の事情」でDFVを使用できなくなり、V12の開発を進めたマトラ

1970 Matra MS120・MS12 V12 Formule 1 

1972 Matra MS120C・MS12 V12 Formule 1

1972 Matra MS120D・MS72 V12 Formule 1

 ド・ゴール政権の支援を得て68年にF1デビューを果たしたマトラだったが、初年度はDFVを搭載したMS10が好成績を残し、対照的にオリジナルのV12を搭載したMS11が苦戦。それを受けて翌69年はF1活動をセミワークスだったマトラ・インターナショナル(=ティレル・レーシング・オーガニゼーション)に絞り、ワークスはメーカー選手権(=スポーツカーレース)に専念したマトラだったが、同年末にマトラはクライスラー・フランスと提携、フォード・コスワースDFVを使用することができなくなった。

 ただし69年にワールドチャンピオンに輝いたティレルはDFVの継続使用を主張。マトラと袂を分かってチーム(=コンストラクター)として再出発することになったのは前述したとおり。

 これで結果的に再度、マトラとしてオリジナルのV12エンジンを使用してのF1プロジェクトが再スタートすることになった。そして70年シーズン用に開発されたマシンがMS120。搭載されたエンジンは新設計のMS12。もちろんハイパワーを生み出すためにV12レイアウトだった。

 ただしヘッドは一新され、MS12/68と呼ばれていた旧タイプでは2本のカムシャフトの間から吸気し、Vバンクの外側に排気するレイアウトだったが、MS12/70と呼ばれる新型は、Vバンクの間から吸気し、外側に排気する、一般的なレイアウトに変更されていた。

 シャーシも一新され、先代のMS10/MS11がF2用シャーシを発展させたものだったのに対して、V12エンジンを搭載することを前提にF1マシンとして専用に設計され、幅広いモノコックにサイドから見ると三角形(後方に向かってせり上がる形状)の燃料タンク部分を追加した格好だ。

 71年のMS120Bを経て72年にはMS120C、120Dへとアップデート。モノコックの形状も一新するほどの大幅チェンジを受けたが、リザルトには反映されることなく、72年シーズンを限りにF1GPから撤退することに。

 ゼッケンが貼られておらずサークルが白いままのMS120とゼッケン#20のMS120C、ゼッケン#18のMS120Dの3台すべて、2012年の6月に、フランスのロモランタン-ランテネにあるマトラ自動車博物館を訪ねて撮影。


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