JPN TAXIはホントにいい? 英国ロンドンタクシーとの比較で見えた足りないもの (3/3ページ)

乗客と乗務員との関係性の違いも……

 筆者はタクシー乗務員でもないし、実際にJPN TAXIのステアリングを握ったわけではないので、今現在では見た目などで判断せざるをえないが、そこから伝わる両車の“似て非なるもの”を強く感じた。

 タクシーやバス業界や、そこに近いひとたちの間では、差別的表現とまではいかないが“運転手”という表現を見下したものと認識する傾向が強い。そのため“運転士”もしくは“乗務員”という表現を意識して業界では使っている。運転手と運転士や乗務員との間に明確な使い分けがあるわけではない。企業の役員車の運転を行う場合は、そこの社員ならば当然上下関係が成立するし、専門業者を頼んでいれば発注元(企業の役員)と請け負い業者(運転するひと)という上下関係が成立する。

 業界ではこのように上下関係が発生するようなケースに対し“運転手”という表現を使うことが多いというのだ。それに反し、運賃(バス)やメーター料金(タクシー)を払う乗客は“神様”なのかもしれないが、不特定多数のひとたちを輸送する公共輸送機関としてのタクシーやバスの乗務員との間には、当然雇用関係なども存在しないので、乗客との明確な“上下関係”というものは本来存在しない。テレビなどの報道によれば、日本全国でタクシー乗務員への暴行が絶えないのは、日本では広くタクシー乗務員を意識するかしないかは別として、意味もなく見下す風潮が蔓延していると見ることもできる。

 タクシーやバス、トラックなどの営業車両の開発などでは、「誰がお客さまなのか?」という主眼の置き方が難しいとも言われている。お金を払って車両を購入するのはタクシー会社などの事業者となるが、それを決裁する事業者の幹部は実際にタクシーを運転して商売をすることはない。実際にステアリングを握るのはタクシー乗務員、そして料金を払って利用するのはわれわれ乗客となる。この3者が一様に満足する車両が理想的となる。

 そのなかでステアリングを握るひとに対する目線が、TX5は“運転士(乗務員)”であることを強く感じるが、JPN TAXIは“タクシー運転手”となっているのではないかとうことを強く感じてしまうところが、“日本版ロンドンタクシー”としてJPN TAXIを手放しで筆者が受け入れられない、そしてTX5と比べて足りない部分ではないかと考える。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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