人気も走りもスカイラインGT-Rに負けた、三菱GTO! 勝敗を分けたものとは

重さと重量バランスがネックもランエボに繋がる重要な存在

 1990年にデビューしたGTOは、スタリオン以来久しぶりに登場した三菱のスポーツカー。大胆なフェラーリ風のスタイリングが与えられ、エンジンは3リッターターボのV型6気筒、6G72型を横置きに搭載。ベースは当時ヒットしたディアマンテのシャシーで、車高はR32型日産スカイラインGT-Rよりも55mm低い、1285mm。全幅は1840mmとR32GT-Rより85mmも広く、ロー&ワイドな大柄なボディをもつクルマだった。

 キャッチコピーは『スポーツは、ライバルがいるから、面白い』、『あなたのスポーツは、面白いですか』この『ライバル』が、同時期に脚光を浴びていた日産のスカイラインGT-R(R32)だったかは定かではないが、4WDの280馬力ターボカーというキャラクターからも、GT-Rの対抗馬を自認していたと推測できる。

 レースに勝つこと宿命づけられたGT-Rと、アメリカ市場をターゲットにした、セダンベースの安直なスポーツカーでは、パフォーマンス面で鼻から勝負はついている、と陰口も言われたが、モータースポーツ、とくにN1耐久レースでは絶対王者GT-Rに対して善戦!(最高位2位)、最終的に一矢報いることはできなかったが、ポテンシャルの高さは証明された。その戦闘力はどこから来たのか?

 GTOがGT-Rに対して有していたアドバンテージを分析してみると……

1)車高が低い=重心が低い。

2)前投影面積が小さいと思われる(Cd値は、GTOが0.33。R32GT-R NISMOが、0.42)。

3)エンジンがパワフル。同じ280馬力といっても、GTOは3リッターターボ。排気量に余裕があり、トルクは43.5 kgf-m/2500rpmと強力無比(GT-RのRB26は、36.0kgf-m/4400rpm)。

4)ブレーキも国産車で初めて、アルミ製4ポット異径対向ピストンブレーキキャリパーを採用。1994年のマイナーチェンジでは、APロッキード製6ポットブレーキのオプションまで用意したほど。

5)ドイツ・ゲトラグ社製のミッションの採用も、じつはGT-RよりGTOが先(前期型は5速MT。中期型から6速MT)。

6)ドライブシャフトも高張力鋼製。

7)車体価格が400万円と、GT-Rよりおよそ50万円安かった。

 このように比べてみると、意外に強味があるのがGTO。ハイブリッドLSDや軽量バージョンの「MR」など、面白い展開もあったのだが、車重が1700kgと重く、重量バランスもかなりフロントヘビーだったのが玉にキズ……。

 サイドエアダムのエアインテークがダミーだったのはご愛嬌として、ストラットのフロントサスもちょっと設計が古かったかも。

 しかし、このGTOがあったからこそ、大きく重たいボディではなく4気筒でコンパクト、4WDながら車重の軽いハイパフォーマンスカーという気づきになり、それがそのランエボシリーズの発展につながっていったのは間違いない。

 現在、GTOの中古車相場は、80~100万円といったところ。GT-Rのようにアフターパーツが豊富でないのが残念なところだが、まだまだよく走るし、この個性、エンターテイメント性は際立っている。あらためて、GTOというクルマを見直してみるのもいいかもしれない。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

愛車
日産スカイラインGT-R(R32)/ユーノス・ロードスター(NA6)
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