【試乗】2007年から進化し続けたR35GT-Rの完成型か! 2020年モデルGT-R NISMOの究極っぷり (1/2ページ)

一般道でも十分通用する快適性

 2013年に日産GT-RCPS(チーフプロダクトスペシャリスト)になった田村宏志さんは、「GTゾーン」と「Rゾーン」の比率を変えた2つのGT-Rを展開、それが基準車と呼ばれる「GT-R」とサーキットスペックの「GT-R NISMO」だ。基準車は2年前の大幅改良でグランツーリスモとして洗練された走りと内外装を手に入れたが、今回の2020モデルはGT-R NISMOの改良がメインとなる。

 本サイトではすでに日本仕様のサーキットインプレッションや2020モデルの詳細情報をお届け済みだが、今回筆者はドイツ・ベルリン近郊の一般道や速度無制限のアウトバーン、そしてかつてDTMも開催されたサーキット(ユーロスピードウェイ・ラウジッツ)で試乗を行なった。その目的は……トータル性能のチェックである。

 まず、ベルリン近郊のホテルからラウジッツまでの約135kmのツーリングだ。「一般道は基準車で行きたいなぁ」と思いながらスタート。これまでサーキットベストのGT-R NISMOは一般道での乗り心地に関しては割り切る覚悟も必要だったが、2020モデルはそれが当てはまらない。あまりの快適性の高さにサスペンションのモードがコンフォートになっているかと勘違いしたくらいである。硬い柔らかいで言えば硬い部類に入るが、カーボンセラミックブレーキや軽量アルミホイールによるバネ下重量の軽量化や新開発のタイヤ、ダンパーの最適化も相まって、足の動きも軽やかつ路面の細かい凹凸も巧みに吸収してくれる。

 エンジンは600馬力/652Nm(欧州仕様)のスペックに変更ないものの、新型ターボの採用でハイパフォーマンスでありながらアクセルレスポンスや過給の滑らかさは基準車譲りとなっている。カーボンセラミックブレーキは街乗り領域でも繊細なコントロール性と優しいタッチに感激。高性能ブレーキ特有の鳴きも、今回乗った限りはまったく感じなかった。

 街中を抜けてアウトバーンへと進む。街中で感じた印象に加えてエアロデバイスも味方となり、一切手に汗に握ることなくクールに200km/hオーバーのハイスピードクルージングを楽しめる。ちなみにアウトバーンの速度無制限区間での最高速チャレンジをメーター読みで308km/hを記録した。

 じつは今回の試乗車はサーキット向けのアライメント値だったそうだが、それを差し引いても直進時安定性は非常に高く、改修工事で車線が狭い区間は、従来モデルだとワンダリングで手に汗握った覚えがあるが、2020モデルはステアリングに軽く手を添えるだけでビシーッと走ってくれた。

 このように2020モデルの一般道~アウトバーンでの印象は、従来モデルの荒々しさが消え、動的質感の高さを含めて基準車に近づいたように感じたが、気になるのはGT-R NISMOの本拠地であるサーキットでのパフォーマンスだ。じつは「GT性能を高まったことでR性能に陰りがあったらどうしよう?」と心配もしたが、単なる杞憂に終わった。


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