過酷なレースにも参戦するトヨタの凄腕テストドライバーが新型スープラへ込めた思いとは (3/3ページ)

決して4気筒モデルは廉価グレードではない!

──では、スープラの開発について伺います。そうした基本的な味つけに関わる素性については、どのような印象を持たれましたか。

矢吹:すごくいい素性の持ち主だと感じました。前後50対50という優れた重量配分やホイールベースの短さ、トレッドの広さなどスポーツカーにふさわしいディメンションを持っていましたから。

──逆に、ホイールベースの短さは直進安定性に対してネガになるような印象もあります。

矢吹:そこに関しては、最初から空力によって安定性が確保されていましたから、まったく悪い印象はありませんでした。いいクルマの基本というのは、誰しも同じものを考えるのだなあと感じたものです。優れた素性でしたから「人間の感性」にどう合致させていくかをじっくりと煮詰めることができたのです。その味づくりにおける基本的な考え方は、安心安全でドライバーを裏切らない、というものでした。

──たとえばディファレンシャルにしても、電子制御の「アクティブディファレンシャル」を採用しています。セッティングの範囲が広いだけにやれることも多く、熟成には苦労もあったかと思いますが、いかがでしたか。

矢吹:アクティブディファレンシャルは効果抜群で、とくにコーナー立ち上がりでのトラクション確保には大いに役立っています。たしかに、こうした味付けでは細かいニュアンスが必要となるのでコミュニケーションが難しい部分もあるのでしょうが、スープラのセットアップについてはそうした問題は感じませんでした。というのも、ヨーロッパで味づくりを担ってくれたヘルフィはベルギー人ですが、フランス語やドイツ語が堪能で、それぞれの言語でトヨタの味づくりのニュアンスを表現できるからです。

──つまり新型スープラの味づくりにおいて、ヘルフィさんがキーマンとなったことはプロジェクトを成功させるための重要なピースだったというわけですね。ところで、矢吹さんにとってのスープラとはどんなクルマなのか教えてください。

矢吹:先代の80スープラはかなりの時間をいっしょに過ごしましたが、とにかく人間の感性に合う楽しさがありました。ですから新型の90スープラでも楽しさとスポーツ性を重視して味づくりを進めました。

──トヨタのスポーツカーとして86とスープラについては、どのようなキャラクター分けをしているのでしょうか。

矢吹:飛行機に例えると、86は練習機で、スープラは戦闘機です。そのくらい走りのレベルを上げています。例えばブレーキについて、スープラでは2ピースタイプを採用していますが、これはサーキットで走り込んでも音を上げない丈夫なブレーキシステムを目指したからです。

──最後に、矢吹さんのおすすめグレードを教えてください。

矢吹:スープラと言えば、やはり直列6気筒エンジンというイメージが強いでしょうから「RZ」グレードが気になっていると思います。もちろん「RZ」もいいクルマですが、だからといって4気筒が廉価グレードという位置付けではありません。とくに「SZ-R」は走りにおいてはトップグレードと同等に仕上げています。新型スープラでは、4気筒の走りにも注目していただきたいと思います。


新着情報