世界的なEVの販売台数は圧倒的にテスラ! それでも日産が負け組ではない理由 (2/2ページ)

EVは走らせるだけではもったいない

 しかしEVの価値は、クルマとしてだけでなく、社会生活とより密着したエネルギー管理に目が向けられるべきだと思う。そこがまた、エンジン車にはできないEVならではの特徴になるからだ。具体的には、ヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH)や、ヴァーチャル・パワー・プラント(VPP)といった、電力需給との関係だ。

 日産と三菱は、東日本大震災の教訓から、EVが災害時の重要な電力供給源になることを学んだ。そして日産は、電気事業を手掛けるニチコンと、VtoHの機器の開発と販売に乗り出した。三菱自も、EVから電気を取り出し100Vの家電製品を利用できるパワーボックスを開発し、1500Wまでの電力供給をできるようにした。またデンソーが、プリウスPHVや他社のEVとPHEVから電力を家庭へ供給するV2H充放電器を開発している。

 EVを、生活で使える蓄電池に応用する発想からさらに拡張し、日産は地域の電力需要を効率化、平準化するスマートグリッドのVPPの研究を開始し、三菱も実証実験をはじめている。

 運輸部門における環境対応として排ガスゼロのEV普及が求められるのとあわせ、その電力を無駄なく活用し、社会全般でエネルギー消費を減らしながら快適に暮らせるようにすることがEV最大の使命であり、単にエンジン車やハイブリッド車の代替で終わらせては、その役割の半分にも満たない存在で終わってしまうことになる。さらに、EVで使い終えたリチウムイオンバッテリーの再利用も日産は視野に入れている。

 総合的なEVの価値という視点に立てば、日産や三菱の取り組みはもっと世界的に注目されるべきであり、単に販売台数の多少で勝ち負けを決めることの意味は薄い。ただ、そうした社会貢献を推進するうえで、販売台数を伸ばすこともまた重要ではある。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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