ホンダの新型軽N-WGNが王者N-BOXを追い落とす可能性!「身内」を上まわる衝撃の実力と売れ行き (2/2ページ)

N-BOXの欠点をつぶしにつぶしたN-WGN!

 また、あまり知られていない先進装備が、ホンダ純正の対応ナビを装着することで、スマホ接続によるオペレーターサービスが利用できるのだ。デイズは専用通信機器搭載の専用ナビ装着で、スマホなしでオペレーターサービスを10年間無料で利用できるほか、ヘルプネット=SOSコールも用意されているというアドバンテージがあるものの、N-WGNでもオペレーターサービスが使える事実を知れば(スマホ利用者に限られるが)、コネクテッドサービスの面でそれほど大きな差にはなりにくい(ホンダにもヘルプネットの導入を期待したいが)。

 加えて、走行性能もN-WGNはクラストップレベル、いや、下手なコンパクトカーをしのぐレベルにあると断言できる。上記の贅沢な技術によるものだけではなく、基本的なボディ剛性、足まわり剛性、フットワーク、エンジンのスムースさ&気持ち良さ、静粛性などで、デイズを凌(しの)ぐ部分も少なくない。

 ターボモデル同士で比較すれば、日常的な微低速域での走りやすさはN-WGNが圧倒。デイズのターボモデルは、スマートシンプルハイブリッドのモーターアシストがあるにもかかわらず、ギクシャクしがちなのである。

 N-BOXと比較すれば、より新しい設計、かつ、「N-BOXの欠点をつぶしにつぶした」というN-WGNにより優れた部分があって当然だ。当たり前のこととして、より低重心ゆえ、カーブやレーンチェンジ時のロール、姿勢変化は絶対的に小さく、より安心・安定した走りが可能。

 そのため、サスペンションを固める必要がなく、乗り心地も上質そのもの。とくに標準車の14インチタイヤ装着車は、いつもの段差を乗り越えても、それがなくなったように感じられるほどマイルドで快適な乗り心地を、安心感ととともに味わせてくれるのだからびっくりである。

 どうしても両側スライドドアが必要、というのでなければ、現時点でN-BOXよりN-WGNが優れている部分は少なくないのである。一例を挙げれば、ターボモデル限定の話にはなるものの、N-BOXターボで感じられる、乗用域の2000回転前後で発生する、持病とも言えるゴロゴロとした振動が、N-WGNではCVTのマップを書き換え、その領域をなるべく使わず走らせることで、ほぼ解消(症状はゼロではない)。

 さらに、使い勝手面でもライバル、N-BOXを上まわる部分がある。その代表例が、2段ラックモードを基本とするラゲッジルーム。背の高いクルマのラゲッジは、フロアに荷物を積むと、上部の空間が無駄になることが多いのだが、N-WGNでは一般的かつ、N-BOX並みにフロアの低い(地上480mm)ローフロアモードに加え、耐荷重50kgのボードをセットすることで、スーパーマーケットのカートの高さに対応する、地上730mmの高さの上段ラゲッジが出現(フリード+と同じ考え方)。

 その際、下段は荷物が外から見えないトランクとして活用でき、後席格納による、ビッグラゲッジモードと呼ばれる広大なフラットスペースまでアレンジできるのだから超便利。これが、アクセサリーの装着でなく、標準仕様でできるところにも、開発陣のアイディアの冴えが見て取れる。

2019年8月の販売台数では、いきなり軽乗用車6位につけたN-WGNだが、生産、納車が進む秋には、デイズやN-BOXに迫ると予想できる。その証拠に、N-BOXの8月の販売台数は全乗用車、軽乗用車1位であることは間違いないのだが、前年比で見ると76%。つまり、新型N-WGNの鮮度や魅力によって、N-BOX購入検討者のなかで、スライドドアを絶対的に必要としないユーザーが、N-WGNに流れ始めているとも考えられるのだ。

 もちろん、王者N-BOXがこのままで黙っているわけはなく、N-WGNに投入された上級技術、渋滞追従型ACCをマイナーチェンジのタイミングで取り入れてくることは必至。つまり新型N-WGNの登場で、デイズ、ワゴンR、ムーブといったライバルとだけでなく、N-BOXはもちろん、その上質極まる仕上がりから、コンパクトカーを含むホンダの身内をも巻き込む、これまでN-BOXの陰に隠れまくっていた苦節N-WGNの逆襲!? とも言える、下克上バトルの火ぶたが切られたということだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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