かつて高性能車の証だった「ツインターボ」をあまり見かけなくなったワケ (2/2ページ)

排気量を小さくすれば多気筒化するメリットもなくなる

 本来、ターボチャージャーやスーパーチャージャーといった過給機は、小排気量でも十分な出力を得られる装置という考え方であり、超高性能なエンジンを実現するために使うことは二次的な発想である。

 かつて、ドッカンターボなどと言われ、大型ターボチャージャーを装備することによりターボラグが大きくなって運転しにくいようなエンジンが開発された背景には、あえて高性能エンジンであることを印象付け、それを付加価値として価格に反映するための言い訳ともいえた。

 しかし、もはや環境重視の時代となり、スポーツカーといえども燃費性能が問われるようになり、ことにダウンサイジングターボを採用する乗用車ではツインターボにする意味を失った。そしてこれが、過給機本来の利用の仕方でもある。

 一方、最新のメルセデス・ベンツの直列6気筒エンジンは、ターボチャージャーとスーパーチャージャーという異なる方式の過給機を両方備え、なおかつモーター機能付発電機(ISG)も搭載することで、排気量を下げながら高出力エンジンに近い性能と運転特性を持たせている。これは、原価を気にせずに済む高級車だからできることであり、乗り味はモーター駆動の電気自動車(EV)に似ている。

 燃費向上は不可避の状況にあり、排ガスゼロのEV普及に至る行程のなかで、シングルターボのダウンサイジングが大衆車を含め多くの車種で行われているのである。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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