【なぜ3気筒だけに?】過去にはV2や直2や直4などもあったのに軽自動車のエンジンが直3しかなくなったワケ (2/2ページ)

トータルバランスで考えると現状は3気筒がベストという結論に

 その後、軽自動車の規格が変わり排気量が660ccまでアップされると3気筒が主流となっていきました。また、スバルはひと足飛びに4気筒へと進化しましたが、スズキ、ダイハツ、三菱の各社も4気筒エンジンをラインアップした時代があります。排気量拡大の噂もあり、次世代軽自動車のエンジンは4気筒が主流になるというムードが漂ったのです。

 しかし、実際に4気筒エンジンが各社から出揃ってみると、いずれも回して楽しいエンジンながら、実用性を考えると660ccという排気量においては3気筒のほうがバランスに優れているという結論を市場は導き出したといえます。その結果、徐々に4気筒エンジンは消えていきました。ちなみに、最後まで4気筒エンジンを積んでいた軽自動車はダイハツ・コペン(初代)です。

 このように軽自動車が進化していくなかで、さまざまなエンジンが市販車に搭載されてきました。そうして現在のレギュレーションで、市場ニーズを満たすには3気筒が最適という結論になったといえます。3気筒を知ってしまうと2気筒のバイブレーションを当たり前のものとして受け入れるのは難しいですし、4気筒はスムースですがコスト面から全面採用するのは厳しいというわけです。

 各社が3気筒エンジンを磨き上げてきたことで、排気量の制限というネガも徐々に解消されていきます。かつては660ccの排気量では車重に対してアンバランスなため、800ccくらいのほうが燃費に有利という声もありましたが、最新の軽自動車であればNAエンジンであっても十分に走ってくれますし、CVTとの組み合わせのおかげでエンジン回転数も抑えられているのでノイズも少なくなっています。パフォーマンス面でも、加速したとき極端に燃費が悪化するようなこともなくなっています。

 最新世代のKF型、R06D型、S07B型、BR06型はいずれもロングストロークタイプで小径ボアの3気筒エンジンという点が共通しています。小径ボアは燃焼に有利ですし、ロングストロークは低回転域での乗りやすさを出すのに優位といわれています。こうした実用性の高いエンジンが揃うことで軽自動車は売れていると考えることもできます。いろいろなエンジンを各メーカーが試したうえで、ウェルバランスの3気筒エンジンを進化させてきたことが、軽自動車が国民車といえるほど売れる時代につながったといえそうです。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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スズキ・エブリイバン(DA17V・4型)/ホンダCBR1000RR-R FIREBLADE SP(SC82)
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