開発陣が語る! チーム一丸で徹底的にこだわり抜いたトヨタ・グランエース誕生秘話 (2/3ページ)

当たり前のことをとことん追い込みひたすら愚直に開発した

 これまでになかったコンセプトのクルマを、世界のVIPにも満足してもらえる完成度で作り上げる。そんな石川さんの意志の強さは、ともにプロジェクトに携わったエンジニアたちの闘志にも火を点けたのではないだろうか。最初期からの開発メンバーのひとり、山本宗平さんは次のように振り返る。

「石川CE(チーフエンジニア)のこだわりの強さには、本当に驚かされましたね。たとえば静粛性。テストコースで試作車を走らせたとき、ある特定の路面条件下で金属的なノイズが室内に響くという問題が発生したんですが、ノイズと言っても、気にならない人も多いような些細なもので、発生する条件も一般道ではそうそうないだろうという特殊なケース。実際、この程度の音がするのは普通のクルマなら当たり前じゃないかと考えるエンジニアもいました。けれど石川はそうした問題のひとつひとつについても、あきらめずにとことんまで追い込んだのです」

 VIPにも満足してもらう上級送迎車というコンセプトゆえ、高い静粛性は当初からの狙いのひとつ。だが、静粛性が高くなればなるほど、小さなノイズが目立ってしまう。開発は、まさにその追いかけっこのようなものだった。そもそも大きく平らなパネル面で構成された箱型のボディは、太鼓のような構造となり、ノイズの残響音が消えにくい特性がある。

 こうした小さなノイズは、一般的なミニバンなどでは、ロードノイズなどでかき消されて目立たないことも多く、「あくまでもクルマはクルマ」と割り切られることも少なくない。だが、グランエースが目指したのは、もはやクルマというよりも豪華な応接間というレベルだったのではないだろうか。

「吸音材などのさまざまな対策を施しても、なかなか石川の満足するレベルにならない。最終的にはショックアブソーバーにまで手を入れて問題解決にあたりました」(山本さん)

「静粛性の高さは、いわばハイエースとグランエースの大きな違いとなる部分のひとつ。どうしてもこだわりたかったところなんです。じつはアブソーバーについては、グランエース専用、つまり日本専用の仕様になっています。日本のお客さまの要望は海外よりも高い傾向にありますが、そこに応えたいという気持ちもありました」(石川さん)

 とてつもない苦労で解決した問題だが、おそらく新型グランエースに乗った方は、その苦労に気付かないまま降りることになるだろう。気が付くのは、別のクルマに乗ったとき。一般的なクルマと比べて初めてグランエースの静粛性の特別さに気が付くのだ。

「新型グランエースは、既存の技術を地味にコツコツ積み上げ、既存以上の快適性や乗り心地を目指したクルマです。われわれがやったのはとにかく愚直に取り組むこと。当たり前のことをとことんまで追い込んで作り上げるという開発でした」(石川さん)


新着情報