【試乗】愛犬家も絶賛! ダイハツ・タフトは独自の世界観をもつ新世代クロスオーバー軽 (1/2ページ)

遊び心を感じさせる装備や作り込みがワクワクさせる

 今、飛ぶ鳥を落とす勢いのクロスオーバー界に、ちいさな新星が現れた。それがダイハツ・タフトだ。バックパッカー、ピックアップトラックをイメージしたというロー&ワイドでスクエアな、ワイルドなデザインだけでも大いに魅力的だが、じつは、軽クロスオーバーとして割り切ったコンセプト、パッケージにタフトらしさがある。

 タフトは最低地上高190mmを誇るライトSUV、クロスオーバーモデルという位置づけだが、何しろ全グレード(といってもシンプルに3グレード、Gターボ/G/X、それぞれにFFと4WDのみ)にスカイフィールトップと名付けられたガラスルーフや、ダイハツ軽初の電子パーキングブレーキ&オートブレーキホールド機構、そしてリヤカメラ、全17種類の先進運転支援機能=最新のスマアシなどを標準装備。一方で、あえてライバルと目されるハスラーにはある後席スライド機構を持たないなど、付けるものは付ける、付けないものは付けない割り切りがあるのだ。

 スカイフィールトップを標準化したのには、理由がある。つまり、あり、なしグレードを設定し、オプション化してしまうと2種類のボディを作り分けしなければならず、ボディ剛性、重心(スカイフィールトップの重量は約5kg)、走行性能まで変わり、設計・生産・走行性能の確認など、むしろコストがかかってしまうからである。“青空標準”というキャッチコピーは、なるほどである。

 最低地上高190mmから想像する4WD性能、悪路走破性も割り切りがある。ハスラーの4WDには、贅沢にもグリップコントロール、ヒルディセントコントロール、スノーモードがフル装備されているが、タフトはFF/4WDともにヒルホールド機能のみ。これもコストと、多くのユーザーが必要としている機能は何か? の答えでもありそうだ。

 軽自動車の荷室は、後席使用時だと奥行は最小限。そこで後席にスライド機構を持たせ、荷室の奥行をかせぐのが常套手段だが、タフトは想定メインユーザーを若い男性に設定し、彼らのパーソナルなライフスタイルから、前席優先パッケージに決定。つまり最大2名乗車として、荷室の拡大は後席の格納でOKという結論に至ったという。

 その裏側には、後席にスライド機構を持たせると、レール分の約7cm、シートの取り付け位置が高くなってしまうこともあるはずだ。全高がハスラーの1680mmに対して1630mm(ルーフアンテナを除くと1600mm)だから、シートをなるべく低くセットしたい意向もあったに違いない。

 だが、後席にレールを持たないメリットもある。まずは、後席を格納した際、角度や段差を抑えられ、フラットなフロアにできる点だ。実際、樹脂面のフロアは、例外的にフラット。フロア奥行きこそ840mm固定(前席シートバックまでは約1280mm)と、ハスラーのフロア奥行き970~1130mm(後席スライド位置による)には敵わないものの、フラットならではの使いやすさがある。後席背面部分からサイドに荷物がこぼれ落ちにくい配慮もなかなかだ。よって、タフトはハスラーと違い、車中泊には対応していない。ファミリー、子育て世代にはタント、車中泊したければウェイクがありますよ……というわけだ。

 そんな男気ある内外装が自慢のタフトの運転席に乗り込めば、天地に狭いフロントウインドウ、立ち気味のAピラー、ワイルド感溢れるインパネデザインが印象的だ。まさしく男の世界である。

 しかも、シートのかけ心地はいきなり軽自動車ベスト。分厚いクッション感を持ち、座面はお尻をふんわり沈み込ませて体重でホールドさせるタイプで、背もたれは背中をやさしく包み込むようにホールドしてくれるからゴキゲンだ。聞けば、ロッキーのシートフレームを奢っているのだとか。

 運転席まわりで感心したのは、電子パーキングブレーキの装備でハスラーやタントにある足踏み式ブレーキがなく、足もとがすっきりしているだけではない。スマホ専用を思わせるセンターコンソールのトレイ、その前にあるふたつのUSBソケットの位置関係が見事。これほどスマホが置きやすく、充電、接続しやすいクルマをボクはほかに知らない。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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