【試乗】愛犬家も絶賛! ダイハツ・タフトは独自の世界観をもつ新世代クロスオーバー軽 (2/2ページ)

少しハード目な乗り味がアクティブギア感を強調

 さて、今回、試乗したのはGグレード。つまり、買いやすい価格のNAモデルで、オプションのACCとレーンキープコントロール、ステアリングスイッチを含むスマートクルーズパック装着車だった(4万4000円高。Gターボには標準装備)。

 試乗はいきなり高速道路、高速走行だったのだが、ダイハツのNAエンジンはトルクに定評があり、G(FF)で車重830kgととくに軽量ではないものの、平たん路なら出足からクルージングまで、十二分な動力性能を発揮してくれる。車内の静粛性については、クルマのキャラクターとして特別にこだわっていないというが、そこそこ静か。

 ところがだ。乗り心地は、エクステリアデザインに合致した(!?)けっこうハードなタッチと言っていい。良路やうねり路ならフラットで快適だが、荒れた路面、段差越えでは、165/65R15サイズのエアボリュームの大きいタイヤを履いていながら、けっこう直接的なショック(音、振動)が伝わってくる。ショックの角は丸められているので、乗り心地のいいクルマに慣れた彼女を乗せて失礼にあたるほどではないものの、軽スポーツカーを除く軽自動車のなかではかなり硬目の部類である。

 本格SUVでも上級車になるとサルーンのような快適な乗り心地を誇るクルマも少なくないが、方向性としては、繰り返すけれど、エクステリアデザインに見合ったワイルドな乗り心地をあえて演出しているのかもしれない。もし、フワフワな乗り心地だったら、これはもう拍子抜け確実ではないか……。

 操縦性はなかなかのものと言っていい。パワーステアリングは低速域ではごく軽く、扱いやすさを前面に出しているものの、速度が高まるとビシリと引き締まる、安心感あるフィールに変貌する。とくに切り方向の雑味のないスムースさは、軽自動車のなかではトップレベルと言っていいほどだ。

 高速走行中、ちょっと気になったのが、タントより前車との追従車間を詰めたという(タントの車間では割り込まれるケースが多かったらしい)ACCの操作性だ。ステアリングスイッチはオン/オフを担当するCRUISE、+RES、-SET、車間調整の4つのみとシンプル化。高速走行中ゆえブラインド操作が求められるため、それはいいのだが、スイッチ自体が小さめで、位置がステアリングの外側に寄りすぎていて、あくまで個人的な感想だが、親指での操作がやりにくかった。もう少し、センターより、上位置にあるとより操作しやすいのではないだろうか。

 高速道路を下りて一般道を走り始めると、乗り心地の印象に関してはさほど変わらないものの、カーブ、山道での低重心感覚、姿勢変化の少なさが好印象。それを引き立てるのが、先に触れた、シートの極上のサポート性だ。ハスラーの場合、前席まで使ったベッド化、車中泊対応によって、前席背もたれのサポート性はほぼないのだが(背もたれをフラットにしないとフルフラットアレンジ性が損なわれるため)、こちらは見事に上体をしっかりサポート。

 乗員の揺すられ感は皆無に近く、安心・快適。長時間のドライブでも、これなら疲労感は最小限で済むはずだ。もし、NAエンジンの動力性能で不満を感じるとすれば、上り坂、フル乗車ぐらいだろう。エンジンは5000rpmぐらいまで回しても不快なノイズや振動とは無縁なのが、そうした好印象を後押ししている。

 もちろん、つねに運転視界に入るスカイフィールトップによる解放感もまた、他車にない大きな魅力、商品力となる。晴れた日の青空も雨の日の雨滴も、そして星空さえも、運転視界の景色の一部になるのである。

 前席では硬めの乗り心地を示すタフトだが、タフトユーザーがめったに使わないであろう後席に乗ってみると、これが、想定外に乗り心地自体は良かった。座面長がほかの軽自動車と比べても短く(約410mm。他車は490mm前後)、ちょい掛けしているような着座姿勢にはなるものの、スライド機構を持たず、クッションの厚みがたっぷりしているせいか、不快な微振動、ショックを感じにくいのだ。前席のみの使用がほとんどだとしても、例えば、愛犬を快適に乗せるのに適切な後席と言えるかもしれない。

 それにしても、タフトは軽自動車界でどんなクルマにも似ていない、独自の存在感、デザイン性あるクロスオーバーモデル。ビビッドなボディカラーも用意されているが、やはり、試乗したレイクブルーメタリックのような、アースカラーがお似合いだ。乗り心地に納得できれば、ボクだって欲しいぐらいで、これはもう買い、「男は黙って、タフト」である。

 試乗車には付いていなかったが、前後の表情が一段と精悍になるメッキパック、またはダークブラックメッキパックは、値は少々張るものの、タフトのエクステリアデザインを完結させる必須のオプションだと思える。Gグレードの場合、高速走行の機会が多ければ、最新制御のACC=スマートクルーズパックもぜひ注文装備すべきだろう。

 そうそう、最後にひと言。タフトのG、Gターボは、なんと、クルマをより魅力的に見せる2トーンカラーが無料、という話。というのは、ダークガラスで黒く見えるスカイフィールトップの前部を黒く塗っているため、パッと見、ブラックルーフに見えるのである。他車の2トーンカラーは税別4万円高ぐらい(ハスラーの例)にはなるので、2トーンカラー好みの人にとっては、スカイフィールトップやリヤカメラなどの標準装備分を含め、けっこうお得、ではないだろうか。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

新着情報