小型SUVブームは25年前にもあった! かつての熱狂を支えた「熱すぎる」クルマたち

25年前にも都市型SUVが大ヒットしていた!

 今や世界的に空前のSUV、クロスオーバーSUVブームだ。日本車、外国車を問わず、コンパクトからフルサイズまで、さまざまなSUV、クロスオーバーSUVが続々と登場している。なかでも国産車で人気彷彿なのが、コンパクトSUVだ。国産乗用車販売ランキングでトヨタのコンパクトクロスオーバーSUVのライズが、ヤリスとともに1~2位の販売台数を記録していることが、なによりの証明だろう。

 ところで、日本のSUVブーム、コンパクトSUVブームは、じつはおよそ25年前の1995年前後でも起こっていたのを覚えているだろうか。1995年と言えば、初代ホンダCR-Vがデビューした年だ。オデッセイに続くクリエイティブムーバー第二弾として、当時のシビックのプラットフォームを流用した、5ナンバーサイズの都市型SUVであり、雪国のユーザーはもちろん、都会に住む人たちにも爆発的に売れたのである。あくまで日本専用車だったが、のちに世界に輸出され、若者を中心に大ヒット。ドレスアップパーツも多くのメーカーから発売され、カスタマイズに熱狂する人たちも少なくなかった。

 その1年前の1994年には、じつはトヨタから、まだ5ナンバーサイズだったRAV4も登場していた。今では日産のTVCMをにぎわせている木村拓哉さんがCMキャラクターとして登場。当初は3ドアのみの設定だったが、1995年は待望の5ドア版、RAV4 V(ラブフォーファイブ)が追加された年だった。1993年の東京モーターショーで初披露されて以来、人気を博したことは言うまでもなく、その血統は、”北米サイズ”にはなってしまったものの、PHVを含む最新の5代目RAV4へと受け継がれている。

 1995年といえば、今でも熱烈なファンが多く、最新型の納期も長い期間となっている、軽自動車版本格SUVのスズキ・ジムニーの2代目が、最後期型として、ビッグチェンジを行った年でもある。サスペンションを改め、オンロードでの乗り心地と操縦安定性を高めたモデルでもあった。

 当時、ジムニーのよきライバルとしてあったのが、三菱パジェロミニだ。そのデビューも今から約25年前の1994年。パジェロの技術を盛り込み、FRと4WDが用意されていたが、4WDはとくに積雪地帯のユーザーや、山間部、牧場などでのニーズに合致。95年11月には1.1リッターエンジンを積んだパジェロジュニアも誕生している。三菱のSUVが生き生きしていた時代でもあった。

 三菱では、このころの”RVブーム”(レジャービーグル)に乗った、RVRという5ナンバーサイズ(3ナンバーになるグレードもあり)のトールワゴンがあった。コンパクトSUVのジャンルに定義されるのは、オフロード走行に向けたスポーツギヤというグレードで、ルーフレールやグリルガードなどがSUVらしさを演出。1995年10月には専用大型フロントグリルガードを備えたワイルドギヤグレードも設定。当時のスキーヤーにも人気だった。

 スズキといえば、エスクードも当時、人気だったSUVだ。今でもそうだが、エスクードは本格的なクロスカントリーモデルの機能とオンロードでの快適さ、使い勝手を両立させた、クロスオーバーとは一味違う本格SUVである。その初代は1988年デビューだが、1995年当時も人気は高く、その年には北米向けに2座のデタッチャブルルーフを備えたX90が登場している。なお、1996年には2.5リッター V6エンジン搭載車が加わり、国内向けエスクードとして初の3ナンバー車となったが、ボディそのものは5ナンバーサイズに収まる使いやすさが際立っていた。

 こうして25年前後を振り返れば、CR-VやRAV4、そしてパジェロミニなど、当時のアウトドア派、スキーヤー、若者を熱狂させたSUVが数多く存在していたことが分かる。なかでもCR-VとRAV4はおよそ25年を経た今でも第一線に君臨するSUVブランドとして成長。その四半世紀におよぶ歴史が、世界的にも根強い人気を持つ両車の秘密でもありそうだ。SUVブームはじつは、25年前に火がついていたのである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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