政府はホントに本気? 2030年の「脱・純ガソリンエンジン車」が非現実感を伴うワケ (1/2ページ)

日本では電力供給インフラを再構築する話が出てこない

 いよいよというか、ようやくというか、政府が2030年代前半に純粋なガソリンエンジン車の販売禁止を行う方向を表明した。電動車への移行は、2050年までの脱炭素社会実現をめざす動きのひとつともいえる。

 現状ではHV(ハイブリッド)、PHEV(プラグインハイブリッド)、BEV(純電気自動車)、FCV(燃料電池車)が日本での“電動車”となっているようだが、HVとPHEVでは、エンジンを搭載しているので、このふたつが残る限りは二酸化炭素の排出を原則ゼロにする“脱炭素社会”の実現は困難。段階的にHEVやPHEVも販売禁止になっていくのだろうか?

 とはいうものの、現状では“言ってみただけ”という感じも否めない。単純に「みなさん、電動車しか買えなくなりますよ」といっても脱炭素社会はやってこない。日本国内の発電施設は化石燃料によるものが多い。たとえBEVやFCVをただ増やしても出口が異なるだけで、化石燃料による発電量が多くなれば、逆に二酸化炭素排出量が多くなる可能性もある。政府は脱炭素社会実現に向け、大規模洋上風力発電の建設などのプランも検討しているようだが……。

 事情通は、「先日、600憶円を投じた福島県沖の洋上風力発電施設が不採算を理由に撤去することを経済産業省は明らかにしています。そのなかで新たな洋上風力発電を建設するとの話も出ています。“ハコモノ”作ってチャンチャンとなってしまうのか不安です」とのこと。ちなみに中国では、原子力発電所を100基にするために、建設を続けているという話もあるようだが、日本では原子力発電所を増やすことはまずできないだろう。

 電力供給インフラの再構築といった話も政府からは聞こえてこない。本当に政府はただ電動車しか買えないようにすれば、それだけでいいと考えているのだろうか? アメリカでは、砂漠へ行けばメガソーラーが急ピッチで整備され、テスラ所有の多い富裕層居住地域を優先的にしているとされるが、電力供給インフラの再構築を進めている。「アメリカでは電力自由化以降、インフラ整備がおざなりにされ、変電施設などの爆発事故も頻発しています。そのままでは電動車の普及に電力供給インフラが耐えられないこともあり、再構築が進んでおります」とは事情通。

 いままでの様子を見ていると、スズキの軽自動車に採用されているエネチャージ搭載車も電動車として認められるというので、日本ではHVだけが増え続けて終わりということにもなりかねない。現実として、日系ブランドではBEVやFCVはおろか、PHEVすら選択肢がかなり少ないなかで、10年後に“脱ガソリンエンジン車社会”ができるのかは非常に懐疑的にも見える。やる前から悲観的な憶測ばかり述べるのはどうかとも自分自身でも思えるが、そう考えざるを得ない現実がそこにあるのも確かである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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