クルマの電動化で「従来の技術」は通用しない? 自動車整備士を取り巻く環境変化とは (2/2ページ)

電動化や自動運転など新技術への対応も進んできている

 合わせて、ハイブリッドカーなど高電圧系を持つ電動車の整備をおこなうために「低圧電気取扱」の講習を受けるというのも近年の自動車整備士においては常識となっている。低圧といえども、この講習を修了すると直流750V以下の電動車が扱えるようになる。たとえば、日産リーフの最大電圧は400Vなので、従来からの整備士が低圧電気取扱の講習を修了していれば、その整備や修理をおこなうことは可能なのだ。

 そもそもハイブリッドカーや電気自動車といった電動車であってもタイヤやサスペンション、それにメカニカルブレーキといったシャシー系の構造や仕組みがまったく違うというわけではない。たしかにエンジン車に比べるとバイワイヤといって電気信号に置き換えた領域は増えているが、それは電動車に限った話ではない。さすがに電気自動車になるとエンジンオイル交換はなくなるが、タイヤやブレーキといった消耗品を交換することは必要であり、整備が不要になってしまうわけではない。

 少なくとも日本においては電動化や自動運転技術というのは急に始まったものではない。ハイブリッドカーは1997年に誕生しているし、先進運転支援システムもSUBARUが停止までカバーするAEB(衝突被害軽減ブレーキ)の「アイサイトver2」をローンチしたのは2010年である。すでに多くの整備や修理がなされてきているし、廃車にした際の処理といった課題もクリアしてきている。

 というわけで、電動化が進んだからといって突然、自動車整備士事情が大きく変わるということはないだろう。それは、すでに徐々に変化してきているからだ。

 むしろ、シェアリングが主流になってクルマの数が減ったときに整備業界の規模がどうなってしまうのかという方が業界的には大きな課題であろう。これまでのように個人所有のクルマをメンテナンスするというビジネスモデルは崩壊してしまうかもしれないからだ。

 とはいえ、シェアリングということはレンタカーの基準が適用されるはずで、そうなると車検は一年ごととなり、整備ニーズは増える可能性がある。さらにシェアリングでは、クルマのコンディションを一定レベル以上に保つことが求められるため、マイカーより頻繫な修理が必要になる可能性もある。そう考えると、自動車整備業界を全体的に見たときの規模は大きく変わらないかもしれない。

 もちろん、CASEというトレンドがどんどんと進むなかで、大口顧客を得るのが難しい街の整備工場の存続が怪しくなるという可能性は否定できないのも事実だが……。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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モトブログを作ること
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