命を守る安全装備なのにナゼ? 後席の「エアバッグ」が普及しないワケ

命を守る安全装備なのにナゼ? 後席の「エアバッグ」が普及しないワケ

確実に作動させるためには条件が厳しい

 衝突安全機能として、エアバッグは70年代に米国で実用化が図られた。当初はモニター調査用やオプション装備としての扱いであった。背景にあったのは、シートベルトの着用が面倒であったり、快適でなかったりという理由である。

 現在、世界のクルマが採用する3点式シートベルトは、1959年にスウェーデンのボルボが実用化し、その特許を公開することで標準化された。それでも、当初の方式は乗員自ら長さの調節をしなければならず、そうしたことが面倒な気持ちにさせていたといえるだろう。自動的にベルトを巻き取るリトラクターや、衝突時にベルトをピンと張るプリテンショナーなどの技術が加わることで、装着しやすさや装着したときの違和感が解消されていった。

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 そしてエアバッグを本格採用しはじめたのはドイツのメルセデス・ベンツだった。1980年にSクラスにオプション装備された。日本でも、ホンダが87年にレジェンドに装備した。当初はいずれも、運転席だけだったが、やがて運転席と助手席へも標準装備されるようになる。続いて、側面衝突に対するサイドエアバッグも開発された。さらには後席乗員も含めたカーテンエアバッグが現われ、また運転者の膝がダッシュボードで傷害を受けることを抑えるニーエアバッグも考え出されている。

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 それらに対し、後席用のエアバッグは実用例が限られている。日産プレジデントは、後席左側にエアバッグを設定している。おもに運転手付で乗る上級4ドアセダンのため、後席の乗員を保護することを重視した。ただし条件があり、助手席はリクライニング機構がなく固定式となり、前後の移動調整量も限られる。

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 理由は、エアバッグは作動したときに乗員の頭部を的確に支えることが必要で、後席用エアバッグ以外はいずれも、車体や座席側面など、乗員との距離が的確にはかれ、展開した(膨らんだ)際に、頭部や体を狙い通りに受け止められる位置に装備されている。しかし後席の場合、助手席をリクライニングさせ背もたれが寝かされた状態であったり、ハイヤーなどで見られるように前後位置の調整をもっとも前へ移動させ、後席足もとを広く確保しようとしたりした場合には、適切にエアバッグが展開できず、機能を果たせない懸念が生じる。

 そのため、一般的には後席用エアバッグが設定されないのである。そのうえで、エアバッグはシートベルトを装着してはじめて機能する安全装備であり、そのため正式にはSRSエアバッグと呼ばれる。SRSとは、Supplemental Restraint System=補助拘束装置のことで、シートベルトの補助としての安全装置という意味だ。したがって、前後の席ともシートベルトを正しく着用することが、安全の第一歩なのである。

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