「乗用車」の燃料電池車には将来性がない? 新型「MIRAI」が登場するなかホンダ「クラリティFCV」はどうなる (2/2ページ)

水素ステーションはそう簡単には造れない

 そもそも、FCVの性能や商品価値、あるいは生産性と価格などに問題があるだけでなく、国内では水素ステーションの整備が望めない。理由は、明快だ。水素ステーションの設置には500平方メートル(約150坪)の敷地が必要で、なおかつ、万一の水素漏れに対し安全を確保するため天井のない施設でなければならない。つまり、水素ステーションの上にビルを建てることはできないのである。

 クルマは、人口の多い都市部を中心に販売台数を稼ぐことになるが、都市部に150坪の土地を持つ人が、上にビルを建てられない水素ステーションに投資をするだろうか? なおかつ、建設には数億円かかるとされ、これはEVの急速充電器設置の20倍近くに相当する。

 少なくとも、乗用車でのFCV普及の未来はないも同然で、凍結した日産の判断は正しいと考えられる。トヨタは、日野自動車や、提携したいすゞ自動車などと、燃料電池スタックの大型輸送への転用という道が残されるだろうが、個人向けのクルマやバイクを中心に事業展開するホンダには、そのような道筋を描きにくい。そもそも欧米と中国を含め、時代はEVへ向かっている。FCVの出る幕はなさそうだ。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

新着情報