水素活用は「燃料電池」だけが答えじゃない! トヨタが示した「別の」回答と将来への可能性 (1/3ページ)

カーボンニュートラルへの取り組みはEV以外にもある!

 EVが「カーボンニュートラル」に対してきわめて有効な手段であり、これまでの化石(石油)燃料による内燃機関にとって代わり、2030年頃には自動車の主方式になりそうな気配である。構造的に二酸化炭素の排出があり得ない電気モーターは、カーボンニュートラルに対してきわめて効果的なパワーデバイスというのが現在の評価だ。

 逆に言えば、地球環境を保全する視点からは、二酸化炭素を排出する化石燃料による内燃機関は、もはやその使用限界が見えたことになり、次世代パワーユニットとして電気モーターを使うEVが絶対視されているのが現状だ。自動車という非常に有益で便利な道具が、構成内容が変わっても存続することはありがたくもうれしい限りだが、発展する形態はEVだけなのだろうか? という素朴な疑問も湧いてくる。

 こうした状況下で、ゼロカーボンに対する取り組みが、EV以外にもあると提言したのがトヨタだった。5月2223日に開催された「富士24時間レース」に水素燃料を使うカローラスポーツを参戦させたのである。車両はGRヤリスのパワートレイン系を流用した車両で、燃料をガソリンから水素に代えた内燃機関搭載車である。水素を燃料とする自動車は、EVの一形式であるFCV(燃料電池車)が知られているが、このカローラスポーツは、水素を内燃機関の燃料として使うことが大きな違いとなっている。

 水素燃料車といえば、古くは1970年代のダイムラー・ベンツ、最近ではBMWそしてマツダ(ロータリーエンジン)といった自動車メーカーや大学の研究室などで開発を進めていたことが知られている。なにより水素燃料車は、燃焼が水素と酸素だけで行われるため、理論的には無公害エンジン(窒素酸化物の生成はあるが希薄燃焼等で抑えられる)としての可能性が着目され、石油燃料に代わる代替燃料という意味も含まれていた。

 ちなみに、物質としての水素だが、元素周期表の先頭にくる軽い元素で、地球上ではもっとも軽い気体、自然界では水素分子(気体)の状態で存在することが皆無(水、化石燃料、有機化合物といった化合物の状態で存在)、空気に対する比重は0.0695で拡散速度がきわめて速い、という特徴が広く知られている。常温では気体、マイナス252.6で液化し、気体状態との体積比は800分の1で非常に凝縮された形態となる。酸素との混合状態で着火すると激しい爆発を起こし、混合比は下限が4.65%、上限が93.3%(空気との混合比で言えば下限4.1%、上限74.2%)と非常に広い爆発限界範囲を持つ物質である。

 なお、水素には、水素原子が金属に吸収されることで、静的な荷重を受けている金属素材(とくに鋼製品)の粘り強さが低下し、もろくなって破断する水素脆性の問題があり、古くから水素を取り扱う上での大きなネックとなってきたが、素材への水素の浸入、素材内部での水素の拡散を防ぐ処理方法が考え出され、対処策として用いられている。


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