水素活用は「燃料電池」だけが答えじゃない! トヨタが示した「別の」回答と将来への可能性 (2/3ページ)

水素燃料車でレース参戦した意義を直撃

 さて、今回水素燃料車の開発を公表したトヨタといえば、1990年代からHVのトップランナーとして世界をリードし、当然ながらHVの構成要素であるEVに関しても第一線級のノウハウを持つメーカーとして見られているが、そのトヨタが、突然、水素燃料車の開発研究を行っていると手の内を明かしたのである。言い換えれば、カーボンニュートラルを実現するにあたり、EV以外にもアプローチ方法があることを、世の中に対して告知、提言したかたちである。

 気になったのは、なぜトヨタが、それもこのタイミングで水素燃料車開発の情報を公表したのか、ということにあった。このあたりは、カローラスポーツ水素燃料車の開発を担当したガズーレーシングカンパニーGRZ主査の坂本尚之氏にうかがうことができた。その坂本氏、水素燃料車がゼロカーボンであることを前提にこう語ってくれた。

「トヨタとしては、ユーザーの方に幅広い選択肢を用意することが大切ではないか、と考えたからです。ゼロカーボンを目指すなら、EVでその目的を達することができます。しかし、自動車ユーザーに対し、EV以外にも他の選択肢があることを提示できれば、ユーザーの方は、より自分に合ったシステムの車両を選ぶことができるようになります。水素燃料車を開発する目的は、まさにこの点にあります」

 内燃機関と電気モーター、給水素(燃料補給)と充電と、ドライバビリティやユーティリティのまったく異なる車両が市場に存在することは、車両選択肢の幅が広がることを意味し、ユーザーメリットそのものになる、という考え方である。さらに、今回、富士24時間レースを水素燃料車公表の場としたことについては、こう続けてくれた。

「水素燃料車自体については研究開発を続けていました。ただ、今回富士24時間レースに参戦することになったのは、昨年末、開発車を試乗した小林可夢偉選手が「可能性を感じるからやってみれば?」と提案してくれたことがきっかけです。幸いなことに、スーパー耐久シリーズが新たな技術開発、実験の場としてST-Qクラスを設けてくれたため、富士24時間レースに参戦することを計画しました。もちろん、勝敗という意識はまったくなく、むしろ、レースが自動車の性能を極限で使う場、試したことが即結果として反映される場と解釈し、走る実験室、走る研究室という意味で参戦を決めました」

 富士24時間レースに参戦したカローラスポーツ水素燃料車、正式車名はORC ROOKIE Corolla H2 conceptでドライバーは、井口卓人/佐々木雅弘/モリゾウ(豊田章男)/松井孝充/石浦宏明/小林可夢偉の6人による構成。いろいろなカテゴリーのレース車両を乗りこなしてきた熟練ドライバーで編成されたのはこのクラスのレースとしては異例だが、社長自らも水素燃料車の研究開発に積極的な姿勢であることを強く示す体制だった。


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