大注目のフルモデルチェンジが空振り! 期待は大きかったのに「販売不振」なモデル3台とその理由 (2/2ページ)

売れまくったあの看板車種ですらやっちまった

2)ホンダ・フィット

・1カ月の販売目標:1万台
・2021年1〜7月の1カ月平均:4998台

 フィットは2020年2月に発売されたので設計が新しい。それなのに2021年の1カ月平均登録台数は約5000台だから、販売目標の半数に留まる。

 販売が低調な理由として、まず内外装のデザインが挙げられる。前後左右ともに視界が優れ、内装の質も満足できて乗り心地も良いが、デザインは賛否両論だ。とくにフロントマスクは、従来型と印象が大きく異なる。そして2020年には、ライバル車のヤリス(旧ヴィッツ)とノートも新型になり、厳しい競争を強いられている。

 また、2021年におけるホンダの販売状況を見ると、国内で新車として売られたクルマの35%をN-BOXが占めた。フィットはN-BOXと価格帯がほぼ同じで、後者は車内が広くスライドドアも装着する。つまりフィットは、N-BOXとの販売合戦に負けた面もある。

 このほか、販売店からは「フィットは、ほかの車種以上に半導体不足の影響を強く受けており、納期も遅れがち」という話も聞かれる。フィットは複数の悪条件が重なって、売れ行きを低迷させた。

3)ダイハツ・タント

・1カ月の販売目標:1万2500台
・2021年1〜7月の1カ月平均:1万1022台

 タントの販売台数は1カ月平均で1万台を超えるから、人気車の部類に入る。しかし、売れ行きを先代型と比べると大幅に見劣りする。先代型はモデル末期だった2018年の時点でも、1カ月平均販売台数が1万1380台に達していたからだ。フルモデルチェンジ後の今よりも、販売台数が多かった。

 また、先代型は、発売の翌年となる2014年に軽自動車のN-B0X、小型/普通車のアクアやプリウスを押さえて国内販売の総合1位になっている。それなのに現行型の販売ランキング順位は、発売直後でもN-BOXとスペーシアを抜けず、軽自動車の3位に留まった。

 現行タントは、ワイドに開くスライドドアからベビーカーを抱えた状態で乗車して、子供を後席のチャイルドシートに座らせ、親が運転席へ移動する機能を向上させている。先代型の欠点だった操舵感、走行安定性、後席の座り心地も改善した。従って商品力は向上したが、セールスポイントが地味でストレートに伝わりにくい。そのために選択の決め手に欠ける。

 クラウンやフィットも、走行安定性、動力性能、居住性などはすべて優れているが、魅力の表現力が乏しく、売れ行きが伸び悩む。歴代モデルの所有者を含めて、ユーザーが商品をどのように捉えるのか、そこを考慮して開発する必要がある。

 ただしいずれの車種も諦めるのはまだ早い。販売面まで含めて、従来型が成功した理由を改めて考えたい。

 とくにクラウンは、現行型になってすべてを大きく変えたから売れ行きが下がった。現行型の販売不振を理由に、SUVに変更するのは早計だ。低重心で高剛性のセダンボディは、クラウンのコンセプトと整合性が高く、SUVでは得られない良さが豊富にある。諦めずにセダンの価値を追求すべきだ。クラウンをSUVに変更したら、実質的に日本のセダンは消滅する。クラウンにはセダンの未来が掛かっている。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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