「フツーの人」が旧車に乗るなら意外にも「欧州車」がオススメ! 手厚い「パーツ」事情と一生乗れる「旧車銘柄」 (2/2ページ)

10年前に比べれば旧車の維持をしやすくなっている

 “元”国民車組(?)は比較的同じような状況だ。シトロエン2CVは、シトロエンからパーツ群をたっぷりと譲り受けた会社が新車を組んで販売してたりするくらいだから、ほぼすべてのパーツが揃う。

 フォルクスワーゲン・ビートルは、本国の純正のクラシックパーツをディーラーなどを通じて手に入れることができるし、北米を中心としたカスタマイズのパーツやリプロダクション・パーツの豊富さといったら驚くほどだ。

 クラシック・ミニも同様。純正品もまだ出てくるしリペア用パーツも豊富、リプロダクションやカスタマイズ用もたっぷりと手に入る。すべてとはいわないが、もっともパーツに困らないヒストリックカーのひとつといっていいだろう。

 そもそも英国は、おそらく世界でもっとも”古いものを大切にする”という文化が深く根付いてる国。古いクルマを楽しむ趣味というのも、当たり前のように根付いてる。なので、クラシック・ミニのみならず、MGやトライアンフといったなくなってしまったメーカー(と名前は同じだけど全く別の会社になってしまったメーカー)も含め、昔からパーツ状況は常に良好なようだ。国別でいうなら英国車がもっとも古いクルマを維持しやすいといわれるのは、そんなところが理由なのだろう。

 ドイツ勢も、なかなか良好だと思う。メルセデス・ベンツは以前から純正パーツの供給に関して定評があったが、今では国内の正規ディーラーで1980年代辺りまでのモデルなら純正パーツを使って仕上げた日常使いができるレベルのクルマを入手できるほど。図面さえあればそれを元に部品を作って供給することはできる、と聞いた記憶もある。ヘリテイジに力を入れてることは間違いない。とはいえ高価であるのも確かなので、ちょっと古いメルセデスのオーナーの中には、北米で流通しているリプロダクションのパーツを使って手を入れてる人も少なくない。

 似たようなことはポルシェにもいえる。近年は古いモデルの純正パーツにも力を入れていて、50,000を越えるパーツが本国には常備されており、それらパーツのカタログをオフィシャル・ウェブサイトから閲覧することができる。が、やはり北米を中心にかなりの数のリプロダクション・パーツが出回っていて、そちらで代用することを選ぶユーザーもいる。

 日本はどうなのか……? 数年前まではほぼ絶望に近い状態だったが、近年では少し動きが出てきている。マツダではFCやFDといったRX-7やNAロードスターなどの復刻パーツの販売をスタートしているし、トヨタもGRヘリテイジ・パーツとして、2000GT、70と80のスープラ用復刻パーツの供給をはじめている。日産も、R32からR34のGT-Rなどの復刻パーツの生産や外装部品などの再供給などをNISMOヘリテージとして開始、今後も拡大していくという。

 また自動車メーカー以外でも、1960〜80年代のトヨタ車を中心としたパーツの供給を手掛ける会社が活動していたり、いわゆる旧車関連のスペシャリストがメーカーで欠品となったパーツを自社で製造しはじめたりしている。事態はずいぶん変わってるのだ。

 もちろん純正部品がすんなりと手に入るに越したことはない。とくに一部のリプロダクション・パーツは精度が高くなく、クルマを組み込む前にオーバーホールするほうがいいなんていわれてるモノすらあったりするからだ。が、そうしたパーツでも手に入るだけありがたい、というのが古いクルマのオーナーの正直な気持ちだ。

 究極的なことを言ってしまうなら、予算に糸目さえつけなければどんなパーツだってワンオフで作る道はあるわけだが、さすがにそれは僕達のような一般庶民にはハードルが高い。

 例えば10年前あたりと比較するとだいぶ状況がいい方向に向いてるのは確かだ。それがもっともっと進んでくれたらいいな、と強く願っている今日この頃である。


嶋田智之 SHIMADA TOMOYUKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
2001年式アルファロメオ166/1970年式フィアット500L
趣味
クルマで走ること、本を読むこと
好きな有名人
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