少数のスポーツカーのみが採用! 1歩上級のクルマ好きだけが知っている「トランスアクスル」とは

この記事をまとめると

■トランスアクスルはミッションをリヤシート付近に置けるので重量配分に優れる

■重量配分の観点からスポーツカーに最適と言えるミッションだが振動などが大きい

■後席のスペースやトランク容量が制限されるので一般的なクルマには不向きだ

現代のスポーツカーには必須とも言える画期的なミッションだ

 R35型のGT-Rが採用して話題になったのがトランスアクスル。もともとはトランスミッションとデフを一体化したものを指していて、FFやミッドシップ、RRで採用されることが多い。つまりエンジンと駆動輪が近くて、ミッションとデフのスペースが限られている場合、スペース的に一緒にしたほうがいいということで採用されるのが一般的だ。

 ただし、最近ではトランスアクスルというとGT-Rのようにエンジンとは別にしてリヤに設置されたものを指すことが多い。有名なところでは1980年代ぐらい(国営時代)のアルファロメオは積極的に採用していたし、フェラーリでもお馴染みだ。日本車の場合は、GT-R以外だと、レクサスのLFAしかない。

 スポーツカーが多いことからもわかるように、メリットは前後の重量配分を適正にできるということ。エンジンと並ぶ重量物であるトランスミッションとデフを、別にしてリヤに置けるのは重量配分としてはかなり有利だ。

 ただし、メリットはこれだけというのも正直なところで、デメリットは多い。前後重量配分についてもエンジンとミッションが前後両端に置かれているので、コーナリングなどで回転方向に発生する慣性を極端に小さくすることはできない。また構造的にもエンジンとミッションは長いプロペラシャフトでつながり、この回転はエンジンのクランクシャフトと同じとなる。一般的にはミッションで減速されてデフにつながっていることを考えると、トランスアクスルのプロペラシャフトはかなり高速だ。それゆえ、振動や騒音が出やすく、高い設計精度や装着精度が必要となり、コスト増にもつながる。またメンテナンス面ではオイルシールなどが劣化しやすいというのもある。

 ドライバビリティの点では、シフトフィーリングの悪化や変速時のギクシャク感が出やすい。遠くにあるミッションを操作するというだけでなく、問題はクラッチの位置で、エンジン側に付けるとミッションとの同期性が悪化するので、トランスアクスル側に付けるとクラッチの切れが悪くなるなどの症状が出やすくなる。

 そのほか、リヤ部分に大きな出っ張りができることになるので、後席やトランクが狭くなるなどの影響も出る。この点でもスポーツカー向きの形式と言っていいだろう。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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