「安全面」でも有効で「お財布」にも効果的! 意外とおろそかにされがちな「タイヤローテーション」の意味 (2/2ページ)

タイヤに刻まれたパターンは守らないといけないのか?

 しかし、これらの方法が合わないタイヤもある。回転方向に指定のあるタイヤだ。分かりやすい例で言えば、たとえばV字型トレッドパターンを持つタイヤだ。回転方向指定を持つ大半のタイヤが採用するV字型のトレッドパターンは、排水性能を向上させるために考えられたパターンデザインで、そのルーツは1980年代のレーシングレインタイヤに端を発している。高速走行、すなわち高速回転するタイヤで路面とタイヤ接地面の間に生じる水膜を排出するには、短時間により多くの水を排出する(流す)トレッドパターンが必須となる。その結果考え出されたのが、回転方向に対して素直に水を排出できるトレッドパターン、つまりV字型のトレッドパターンだったのである。

 しかし、V字型のトレッドパターンは、個々のトレッドブロックも回転方向性を持つことになり、回転方向(前進、後進)に対しては非対称のパターンデザインとなる。そして、トレッドゴムは装着して使用される間に、回転方向に対して順応する方向で馴染んでいく特性がある。簡単に言ってしまえば、回転方向の力に対してうまく力を受け止めるゴムの組成となるのである。しかし、こうしたかたちで使われたタイヤを、逆転方向の位置に装着してしまうと、本来意図した排水効果が得られず、またトレッドゴムに対しても逆方向の入力となることから、タイヤにとってはテメリットばかりが生じることになる。

 回転方向指定のあるタイヤのローテーションは、同一方向での前後の入れ替えとなる。右サイド、あるいは左サイドでの前後輪の入れ替えという方法だ。

 FFのレースカーで、回転方向のあるタイヤを後輪だけ逆組して使うといった稀に見られる奇手もあるが、これは回転方向を持つタイヤの正しい使い方とは言えない。あくまでイレギュラーである。

 装着タイヤの所期性能を長い時間にわたって維持しながら、耐摩耗性能(タイヤ寿命)も最大限長くとるタイヤの使い方、それがタイヤーローテーションの目的である。定期点検の際、ローテーションの作業を申し出るか(ディーラーによっては走行距離をチェックしながら必要に応じて処理してくれる例も少なくない)、時間と手間を惜しまなければ、自分で行う方法もあるが、自分で作業を行う場合は、ホイールナットの締め付けトルクなどにも注意した上で、安全を確保してから行ってほしい。


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