消滅した日はスバリストの暗黒日! 51年間「RR」「4独サス」「キャブオーバー」を貫いた軽トラ&軽バンの金字塔「サンバー」とは (3/3ページ)

自動車史に大きな功績を残した

 4代目となる通称「サンバートライ」も基本レイアウトは不変。デビューは1982年でエンジンはこの世代の最後までまだ2気筒だが、内外装を見比べるとクルマ全体の洗練度が劇的に向上しており、運転席まわりの装備も随分現代的となった。カタログでも、バンのほうは新世代のワンボックスとして生まれ変わった印象を強めており、爽やかな細身の外国人モデルを起用してオシャレなムードを高めている。全般的にRV色が強く、カジュアル寄りのイメージチェンジもあって、今のXVの始祖のようだ。

 さらに「サンサンウインドー」もこの世代に登場し、明るく開放感に溢れたワンボックスの車内でレジャーを楽しむイメージをかきたてるなど、ライフスタイル演出車としての魅力を高めた。1983年には3列シート搭載の7人乗り派生車ドミンゴも生まれ、90年代中盤から盛り上がるミニバンブームの超先駆けモデルといえる。

 当時の軽バンを7人乗り仕様にする発想には驚かされるが、そもそもサンバーには高荷重状態でもフラットさを損なわず、走行安定性にも大きな変化がないという初代モデルからの美点があり、軽の7人乗り化は、想像するよりは無理なく実現できた。そして軽バンにも2ペダルの需要が少しずつ出始めた時期でもあり、クラッチレスのセミATを設定。バンのほうはカジュアル路線化が見られるも、トラックのほうはまったく変わらず頑強イメージを訴求。トラックのキャビンにもハイルーフが設定されている。

 新規格に伴いボディは大型化。フロント部分のオーバーハングが長くなり、全面からの衝突安全性が高まる。それでも運転席の着座いちは前輪の真上にまるなど、やはり基本的なパッケージングは不変だ。室内では明るいパノラマビューを訴求。マルチフラットシートは大幅に質感が向上し、操作時の動きも劇的に軽くなった。後席そのものも普通の座席らしさを増し、ミニバン的に使いやすくなる。

 また、赤帽仕様が誕生したのもこの世代。赤帽はできた当初からサンバーを積極採用。1日に500km走るペースにも耐えられる耐久性を高めたエンジンを搭載。このノウハウはのちにダイハツに開示され、現行型にも受け継がれている。

 1990年デビューの5代目からはついにエンジンが4気筒となり、新規格に合わせて排気量は660cc化。パワフルなスーパーチャージャー仕様やSUBARU自慢の無段階変速ATのE.CVTも設定され、エアコンやパワステの標準装備化も進むなど、進化の幅は大きかった。乗用のバンは「サンバーディアス」と名称もあらため、コミカルなフロントマスクのデザインを採用。さらなるイメージチェンジをはかっている。

 軽バン/トラックの貨物車にとって、低速トルクで3気筒に及ばない4気筒エンジンを搭載することはデメリットにもなり得たが、サンバー持ち前の静粛性の高さと振動の伝わらなさは4気筒化でさらに際立ち、他銘の軽バン/トラックにはない上質感で差別化をはかれるアドバンテージは確かにあったのだ。

 また、この世代はハウステンボスとのコラボ企画で生まれたレトロ調デザインの「ディアスクラシック」が大ヒット。ヴィヴィオのビストロと合わせて空前のレトロ顔ブームを巻き起こしたなど、日本の自動車史に大きなトピックとして語られるモデルも生み出した。サンバーの名車イメージを飛躍させる功績を残したといえる。

 ヴィヴィオなど乗用の軽自動車では耐久性に問題のなかったE.CVTだが、電磁クラッチがトラック用途の高強度な負荷に耐えられず、1995年からスズキ製の3速ATを搭載するようになっている。

 派手なディアスクラシックとは対照的に、商用向けのバンとトラックのフロントマスクは素朴で実直なデザインとされ、メリハリのあるラインアップとなった。2代目ドミンゴも登場している

 6世代目は1998年からの新規格に合わせてフルモデルチェンジ。これが最後のSUBARUオリジナルサンバーとなる。もちろん基本レイアウトは初代から不変であり、最後までブレずに信念を貫いた結果となった。

 デザイン面でも「堅牢感」が再び強められて原点回帰した印象さえある。車体構造は初代から変わらずフレーム付きボディを採用するが、フレーム部分を新構造のY字型とし、さらに当時のSUBARUの乗用車で定評のあった新環状力骨構造を採用した。これによりボディ剛性と衝突安全性が飛躍的に向上。レガシィなどの乗用車と同じSUBARU基準で煮詰められた操縦安定性により、高いアクティブセイフティ性能を備えるに至っている。その一方、高速走行中は横風に弱い難点は残るが、軽自動車規格の限界ともいえる部分なので是非に及ばず。

 こうして振り返ると、世代ごとに多少の方向修正は見られるものの、クルマとしての基本は一切変えることなく50年以上にわたり継承し続け、時代の先をゆく新しいチャレンジも枚挙にいとまがない。まさに、これぞ「不易と流行」。サンバーの名車たるゆえんを強く実感する。合理性から生まれたレイアウトを踏襲しながら、常に現場の声に耳を傾けて改善し続けた半世紀だった。

 多くのユーザーから熱心に支持され続け、そして生産が終了して10年近く経った今もなお、その存在を惜しむ声が後を絶たない軽バン/トラックはこの世にサンバーだけだ。


マリオ高野 MARIO TAKANO

SUBARU BRZ GT300公式応援団長(2013年~)

愛車
初代インプレッサWRX(新車から28年目)/先代インプレッサG4 1.6i 5速MT(新車から8年目)/新型BRZ Rグレード 6速MT
趣味
茶道(裏千家)、熱帯魚飼育(キャリア40年)、筋トレ(デッドリフトMAX200kg)
好きな有名人
長渕 剛 、清原和博

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