レストアしつつの魔改造! いま世界的ブームの旧車の「レストモッド」とは (1/2ページ)

この記事をまとめると

■「レストモッド」とは「レストア」「モディファイ」を合わせた造語だ

■「レストモッド」はレストアするだけでなく現代の技術とセンスでモディファイを施す

■スーパーカーや貴重なスポーツカーだけでなく日本車もレストモッドの対象になっている

旧車を現代で乗るために見直されているカスタム手法

 いまや世界的なトレンドといえる「レストモッド」。そもそも、どういう意味かというと「レストア」と「モディファイ」を合わせた造語で、旧車を現代の技術でよみがえらせ、ついでに新たな解釈を加えるという流れ。なので、単なるカスタム(改造)とは一線を画しているというのがレストモッド派の主張です。

 これまでのレストアは「オリジナル原理主義」的な面もありました。たとえば、エンジンルーム内の眺めが、オリジナルカタログと同じでないとダメ! つまり、オリジナルが赤いケーブルを使っていたら死んでも赤! 黒やブルー、はたまた太めサイズにしただけで原理主義者は眉をひそめるわけです。

 一例をあげれば、フェラーリが自社内で行う公認レストレーション「フェラーリ・クラシケ」は、原理主義者が大歓迎する「オリジナル上等!」なもののトップランナー。クラシックカー市場で「クラシケもの」は異様なほどの高騰を見せている一因でしょう。

 一方で、レストモッドは原理主義に比べたら、自由でクリエイティブな側面を持っているといえます。前述のケーブルにしても色はともかく「太くするとリークの危険が低くなり、かつパワーアップにも対応できる」と考えるわけです。あるいは、錆びてボロボロになった外板をカーボンなど異なる素材に置き換えることもレストモッドの主流モディファイ。軽量化や強度アップ、あるいは再解釈したデザインの表現も可能となるなどセンスの見せどころでもあります。

 この再解釈という微妙で、個人のセンスや価値観が支配する領域こそレストモッドの特徴。再解釈したカスタマイズがダサければ、当然市場からは受け入れられません。オリジナル原理主義者をも黙らせるようなセンス、そしてテクニックが光ればこそ、再解釈は許され、また大きな価値を生むというわけです。

 そんな優れたレストモッドを行うファクトリーが続々と登場しているのはご存じのとおり。中でも「新車よりクオリティ&パフォーマンスが高い」と絶賛を浴びているのがアメリカの「シンガー」です。ポルシェ911(主に964タイプ)をベースに、ボディやエンジン、インテリアまでシンガー流の再解釈を加え、自社のみならずF1チームや有名チューナー、果ては外部のインダストリアルデザイナーまで巻き込んだ作品は世界中から注目の的。レストモッドの価値を急上昇させた立役者といってもいいでしょう。

 彼らはレストモッドに飽き足らなかったのか、75台の限定ながらレストモッドの量産モデルという(もはや訳が分からなくなる寸前の)DSLをリリース。

 お値段は2億円とかなり張りこみますが、生産前からすでに完売という売れっ子ぶりを示していることからも、いかにシンガーが世界的に評価されているかがうかがえます。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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