「姿を隠すため」とは限らない! イマドキの新型車の「偽装ラッピング」の目的とは (2/2ページ)

いまは隠すほど変化の大きいモデルチェンジ自体が減った

 唐草模様のテストカーが走るのは、発売が迫った開発の最終段階になる。最近は発売の数カ月前に予約受注を開始する事情もあり、仮に偽装を見て本当の外観が想像されても、その直後には販売店で概要が公表される。従って問題はなく、ティザーキャンペーンに都合良く活用されている。

 この典型が「東京オートサロン2022」に出品された「シビックタイプRプロトタイプ」だろう。シビックタイプRは、シビックの派生モデルだから、本来なら偽装を施す必要もない。敢えて偽装を行って注目度を高めた。そこで偽装にも、歴代シビックタイプRのシルエットを散りばめている。話題性を狙った。

 ちなみに外観がフルモデルチェンジのたびにカッコ良くなった1960年代から1980年代までは、クルマのデザインは秘匿中の秘匿事項だ。外観デザインを巡って、いわゆる産業スパイが暗躍したこともある。自動車雑誌が印刷会社からカタログの色校正紙を手に入れて、スクープとして掲載したところ、メーカーが窃盗事件として刑事告訴したこともあった。編集部も盗品故買の容疑で捜査を受けている。

 このような時代に比べると、今はクルマのデザインが安定成長期に入り、変化が乏しくなった。新型ヴォクシーのフロントマスクは少々奇抜だが、驚くほどではないだろう。ステップワゴンなどは完全に想定の範囲内だ。そのために新型車のデザインに対する取り扱いも、昔に比べると穏やかになった。これを象徴するのがラッピングによる偽装だ。偽装も多様化している。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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