日本の至宝「クラウン」はなぜ海を渡らなかったのか? そして新型がついに海外に本気で挑む理由とは (2/2ページ)

新型は見るからに15代続いたクラウンとは違う!

 2022年7月15日、日本時間、13:30から幕張で行われた新型クラウンの発表会は、なんとWORLD PREMIRE。世界に対する発表の場となったのだ。日本専売車のクラウンが、ワールドプレミア???? と驚いた人も少なくないはずだが、16代目となるクラウンは、蓋を開ければ、某新聞がクラウンはSUVとなる……という事前情報を見事に裏切り!? クラウンの威信にかけた、世界40か国の国と地域で、年間20万台の世界販売をもくろむ新型として、クロスオーバー、スポーツSUV、セダン、ワゴンの4タイプのボディを揃え、TNGA、電動パワートレインを携えて、世界にお披露目されたのだった。

 多様性が叫ばれる昨今、なるほど、世界への挑戦、4タイプのボディは納得のいくもので、クラウンの生き残りに不可欠なシリーズ展開と言えそうだ。ワールドプレミアの壇上で、豊田章夫社長が、新型クラウンを「明治維新」、「日本のクラウン、ここにあり」と表現したところにも、新型クラウンへの並々ならない期待が込められていると察することができる。

 そして豊田章夫社長はこうも言っている。「若い人が乗っていても親のクルマだと思われない、女性が乗っても、ご主人のクルマに見えない、それが新型クラウン」。たしかに、クラウンユーザー、ロイヤルカスタマーがぶっ飛ぶほど、クロスオーバー、スポーツSUV、セダン、ワゴンの4タイプのどのデザインも素晴らしくカッコよく、スタイリッシュで先進的で若々しい。これまでのクラウンとは別次元の完成度(のはず)と言っていい仕上がりと見た(あくまで発表会での印象)。

 クラウンを国内専売車のまま続ければ、豊田章夫社長が壇上で述べたように「15代で幕を閉じた徳川幕府の江戸時代のように」、「販売の右肩下がり」で生き残れないことはおそらく間違いないところ。だからこそ、16代目クラウンは、世界に打って出る、クラウンのゲームチェンジャーになりうる、我々の想像を超えた展開、新時代のグローバルモデルとして生き残りをかけた新型と言っていい。

 クラウンの概念を超えるクラウン。まずはクロスオーバーモデルから市場に投入されるという市販車の登場、試乗が待ち遠しい。ただ、新規クラウンユーザーが世界中で増えることは必至としても、クラウンとしてのあまりの飛躍!? にシリーズ全体として、日本の歴代クラウンユーザー、ロイヤルカスタマー(高齢なはず)が新型をどう見るかは(セダンはまず大丈夫だろう)、蓋を開けてみないと分からない……というのも正直な印象である。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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