「このクルマ、イケてんな……」でも販売は不発! いつの日か「お宝」になるかも知れない「大穴中古車」5台 (2/2ページ)

いま売り直せばヒットしそうな気がしないでもない

ホンダ HR-V

 これまたカッコよかったのに、販売は大苦戦してました。一見するとシンプルなスタイリングですが、腰上・腰下の絶妙なセパレーションによってクロスオーバー的な車体をじつにコンパクトかつ、あか抜けて見せることに成功していた気がします。シャシーはいろいろと共有されていたものですが、おかげで小まわりが利き、4WDだって選べたのですから、街からアウトフィールドまで幅広く活躍できたことでしょう。

 なのに売れなかったのは何故か。

 巷では、より実用的な5ドアの投入が遅すぎた(3ドアの1年後)などと言われてますが、じゃあ5ドア版が「実用的で、カッコよくて、しかもお手頃価格!」とグイグイ売れたかというと、そうでもありません。的外れもいい加減にしろって感じですが、じつのところはライバル、しかも強力な競合相手がいたからではないかと。トヨタRAV4やスバル・フォレスター、さらには身内となるホンダCR-Vなどしっかりしたクロスオーバーがぞろぞろいるわけです。そう考えると、HR-Vのカジュアルさがユーザーの目には「中途半端」と映ってしまったのかもしれません。

 ともあれ、海外ではHR-Vの名前が続いているので、カタログ作りに携わった身としては浮かばれる思いですけどね。3ドアで柿の実みたいなオレンジ、CVTがヤレてないタマがあったら本気で欲しい1台です!

ルノー・アヴァンタイム

 アヴァンタイムは、ルノーのミニバン「エスパス」をベースにした2ドアクーペ。と紹介しても、実物をご存じない方には全然ピンとこないはず。ミニバンの大きさ、似通ったスタイルなのに、デカめのドアが2枚だけってのはあとにも先にもこのクルマだけでしょうね。ちょうど、エスティマのドアがふたつだけになり、2列5人乗りにしたといえば雰囲気は伝わるかと。

 で、ルノーは販売だけでして、設計開発は「マトラ」の手によるもの。古くはF1やグループCカー、果ては航空宇宙産業にまで手を広げていた同社ですから、やることが変わっているというか、振り切れてるというか、ね。それゆえ、売れなかったのは日本国内だけでなく、フランス本土でも同様だったみたいです。生産台数は1万台に及ぶことなく、2年でもって生産終了。日本国内への正規輸入はそれでも200台を数え、フレンチブルーミーティングなどフランス車マニアの間ではお宝として珍重されています。

 キワモノだったから売れなかった、そう考えるのが無難でしょうが、こういうキレがあるクルマが売れないというのは「ちょっと悲しい」ですよね。ぜひとも、クルマの世界での多様性も認めていただきたいものです。

アルファロメオ・ステルビオ

 プレミアム戦略下におけるアルファロメオの主力となるはずだったステルビオも、ご承知のとおり目を覆わんばかりに売れてません。前評判も高く、上陸当初は実車をひと目見ようとプレミアムカーのオーナーたちがこぞって駆け付けた! にもかかわらず売れない。一説によれば、先進安全デバイスが足りないとか、快適装備に遅れがあるとかなんとか。とはいえ、他社のトップレンジSUVのように至れり尽くせり、安全万歳にすれば売れるかと問われれば、それも違うでしょう。

 やはり、ステルビオにしてもジュリアにしてもアルファロメオって絶好のブランドを活かしきれてないのです。なんたってヘビがヒト食ってるエンブレムなんだから、もっと、こうブチあげてくれないとね。マセラティのおさがり使うなんて「アルフィスタ」とやらが喜ぶはずもないでしょう。FRシャーシの開発にしたって、普通のメーカーがやってることと違いがあるわけじゃなし。全部が全部、4Cみたいなクルマにしろとは言いませんが、少なくともあれは売れましたからね。少数とはいえ「完売」ですよ。

 そういうファクターほっぽらかしにして、赤いだけのSUV作ろうが、古臭いFR作ろうが、何百年かかっても「売れない」に決まってます。パンプアップして速くなろうが、タイヤサイズ鬼デカにしようが、アルファのバッヂを活かせなければ、カッコだけミラネーゼ、つまり張り子のトラ同然。早いとこ子供だましから卒業して、これまでのレガシーにふさわしいクルマを作ってほしい、筆者をはじめ、そう願っている方は決して少なくないことでしょう。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

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