男の72回ローンで手に入れた1970年式ポルシェ911S「プラレール号」! モータージャーナリストの愛車インプレ【松村 透編】 (3/3ページ)

プラレール号をオーナー目線でインプレッション

■プラレール号のエンジン。細かい仕様はヒミツ

 いまは仕事と子育てに追われる日々なので「少なくとも2週間に1度、1時間だけ走る(できるだけ高速道路メインで)」とマイルールを決め、どうにかこうにかプラレール号と接する時間を捻出しています。

 昭和の時代から、いくつもの都市伝説が語られてきた空冷エンジン時代の911

 かつて「納車してから自宅に到着するまでにクラッチがなくなった!」といった都市伝説を聞いたような気がしますが、プラレール号に関していえば、それほど気難しい類いではないという印象です。床からペダルが生えているオルガン式独得の動きや、アイドリングのまま左足をするすると床から離していき、クラッチミートする瞬間を身体に憶えさせれば、MT車に慣れている方であればそれほど苦労することはないと思います。ペダル位置が全体的に右にオフセットされているので、その点は慣れが必要かもしれません。

 次にトランスミッション。1970年モデルは、本来であれば通常の1速の位置がリバース、2速の位置が1速というレーシングパターンです。しかし、プラレール号は通常の5速と同じシフトパターンを採用したミッションを搭載しています。クラッチを切り、そのまま1速に入れると「ガリッ」となる場合はあるので、2速に入れてから1速に押し込むとスムースにいきます。ただ、左ハンドル(右シフト)であること「蜂蜜のなかをスプーンでかきまわす」と形容されるシフトはちょっと慣れが必要かもしれません。

 では、ゆっくりとクラッチミートとしていざ発進。1速から2速にシフトアップする際、クラッチを切ったあとのエンジンの回転落ちが早いので、アクセルワークとクラッチ操作の工夫してスムースなシフトアップを心掛けます。ここはオーナーさんによってそれぞれやり方が異なるかもしれませんが、私の場合はアクセルペダルに足を乗せたまま、すこーしだけエンジンの回転を上げておいて2速にシフトアップし「ふんわりと」クラッチをつないでいます。

■プラレール号の内装。クーラー、ラジオ、時計、パワーウインドウなどの快適装備は一切ナシ!

 エンジンがある程度暖まったところでチョークレバーをオフにして、少しずつエンジンの回転をあげていきます。油温計の針が90度手前あたりを指す頃、高速道路に乗って4速または5速巡航。ときどき3速または4速にシフトダウンして高回転域までエンジンをまわします。エンジンの仕様はマル秘にしておきますが、5000回転から7000回転までは50年以上前のクルマとは思えないほどのパワーです。このご時世、速度計にも注意して……などとやっているうちにあっという間に1時間のドライブは終了です。

 燃費はだいたい4〜5km/Lくらいでしょうか。これまで大きなトラブルといえば、納車されたばかりの頃、ギヤをリバースに入れた際に操作ミスをしてミッションを壊したことくらいです。トラブルではありますが、これはクルマの故障ではなく、オーナーのミスですよね。

 他にもメンテナンスしなければならないクルマがたくさんあるなか、プラレール号に新たな命を吹き込んでくださった主治医のKさん。そして、くしくも9月11日生まれながら、プラレール号にはまったく興味がなく……それでも「黙認」してくれている妻にも感謝しています。

プラレール号を所有することは「芸の肥やし?」

■プラレール号をどうにか維持できているのも、家族をはじめとする皆さまのおかげ……

 クルマのメディアに携わるようになってからというもの、なぜかオーナーインタビューの記事を担当する機会が多く、これまでの体験が結果として「芸の肥やし」となっているような気がします。たとえば、旧車オーナーさんの愛車保管問題、雨の日は乗りたくない問題、部品の調達、欠品や製造廃止、主治医との信頼関係……などなど。独得の世界観をオーナーさんと共有できる場面にしばしば遭遇するのは思わぬ副産物でした。

 急速に迫り来る自動車のEV化の波。それに呼応するかのように、古いクルマに対する風当たりの強さ。果たして、いつまでプラレール号を走らせることができるのでしょうか。将来、我が子が「父ちゃん、俺にプラレール号くれよ」といってくれたとして、引き継いだあとも果たして走らせることができるのか……。いままでがそうであったように「なるようにしかならない」。そう考えるようにしています。

 近い将来、911も電動化されるのでしょう。正直、複雑な心境ではありますが、それはそれとして否定するつもりはありません。「最新のポルシェが最良のポルシェ」と「最愛のポルシェが最高のポルシェ」が共存共栄できるよう、微力ながらその魅力を発信していきたいと思っています。


松村 透 MATSUMURA TOHRU

エディター/ライター/ディレクター/プランナー

愛車
1970年式ポルシェ911S(通称プラレール号)/2016年式フォルクスワーゲン トゥーラン
趣味
公私ともにクルマ漬けです
好きな有名人
藤沢武生

新着情報