1カ月で2万5000台を受注してもクラウン・クロスオーバーは「バカ売れ」じゃない! 本命はこの先に続く車種だった (2/2ページ)

販売数が落ち込むところで別モデルを投入するしたたかさ

 問題は今後の売れ行きだ。クラウンクロスオーバーのように外観の個性が際立って強い車種は、好みに合うユーザーの購買意欲を強く刺激する。したがって、発売直後には売れ行きを急増させるが、その後は一気に下がりやすい。

 C-HRはこのパターンだった。2016年12月に発売され、発売後1カ月の受注台数は、クラウンクロスオーバーの2倍近い4万8000台に達していた。2017年上半期(1〜6月)には1か月平均で約1万3000台を受注して、小型/普通車販売ランキングの順位は、プリウスとノートに次いで3位に入った。

 しかし、その後の販売下降も早く、2018年の1カ月平均は約6400台だから半数に減った。2019年はコロナ禍前ながら約4600台だ。発売から2年間で、C-HRの売れ行きは3分の1に下がった。スポーツカーを含めて、外観が個性的な車種には、このような商品特徴がある。

 メーカーが設定したクラウンクロスオーバーの月販基準台数は3200台だが、今後も長くこの台数を達成するのは困難だ。SUV風だが、セダンボディだから、走行安定性、乗り心地、静粛性で有利な代わりに荷室の使い勝手は悪い。

 そして、セダンを購入するユーザーの多くは、メルセデス・ベンツやBMWのようなフォーマルな雰囲気を好む。SUV風のクラウンクロスオーバーは選ばれにくい。したがって1年以上を経過すると、クラウンクロスオーバーの受注台数は低下する。

 そこも踏まえてクラウンは、これからスポーツ/エステート/セダンという複数の車種を追加する。スポーツとエステートはリヤゲートを備えたSUVスタイルで、とくに後者は3列目のシートを備えた仕様も用意するから、SUVの本命として好調に売られるだろう。4車種で「クラウンシリーズ」の売れ行きを保つ戦略だ。

 それならなぜ最初にクロスオーバーを投入したのかといえば、エステートでは、従来のクラウンとはイメージが大幅に異なるからだ。逆にセダンを最初に投入したら、クラウンが変化したことを表現できない。

「SUV風セダン」のクロスオーバーは、新旧のクラウンを結ぶ架け橋として最適だから、真っ先に投入された。決して本命ではない。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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