「たった363台」の販売台数だが驚異! 韓国ヒョンデの「未来を見据えた」恐るべき種まき戦略 (2/2ページ)

偏見を持たない若い世代にアピールして狙うは将来的な日本超え

 日本の若い世代のなかには、「日本より韓国のほうが、より先進国」だと感じる人が多いとの話がある。このような世代は、これから消費者としての中心世代となっていく。ヒョンデはまさにそこに的を絞っているのである。ヒョンデにとっては幸いとでもいうべきか、日本メーカーはZEV(ゼロエミッション車)のラインアップにも出遅れている。若い世代ほど環境保護意識が高いので、まさに自動車でも日本において韓国製品が躍進する千載一遇のチャンスなのである。

 ヒョンデ自動車は2020年にトップの若返りをはかった。そして、その若いトップの方針が2022年になり、いよいよ世界で芽吹いてきた。いままでは控えめに見えた日本車とのガチンコ勝負が世界的に顕在化してきたのである。これもトップが若い世代となり、日本に対する見方が変わったことによるものと考えていいだろう。

 日本政府は入国に際しての水際対策を大幅緩和し、コロナ禍前並みのインバウンド(訪日外国人客)による国内消費を期待している。しかし先日、韓国釜山で世界的にも人気の高い韓国の男性ボーカルグループが無料コンサートを行った際には世界中から多くのファンが韓国を訪れ、地元釜山だけでなくソウルあたりでも経済波及効果が高かったと聞く。また、韓流ドラマもコロナ禍のすごもり生活のなか、世界的に視聴が広まり、そして人気が高まった。そのため、韓国国内のドラマロケ地をまわる聖地ツアーへも世界中から参加する人が集まっているとのこと。

 このような長期的、そして広い視野での韓国のエンターテインメント戦略により、これから消費者として中心を担うような世代の若者が「韓国に行きたい」と語っている報道を見たことがある。観光面でも韓国は少し先を見越して動いているように見える、そして「日本を抜ける」という自信すら感じる。

 2022年に入り、タイの首都バンコク、インドネシアの首都ジャカルタのそれぞれ近郊で行われたオートショーの取材に出かけた。日本車の販売シェアが圧倒的に多い地域なのだが、それぞれのショーで注目を浴びたのは韓国と中国メーカーであった。日本メーカーもブースを訪れる人で賑わっていたのだが、韓国や中国メーカーを訪れる人とは明らかに傾向が異なっていた。日本メーカーを訪れる人のなかには、古くから日本車を乗り続けているような年配の人が目立っていたが、韓国や中国メーカーを訪れる人は最新トレンドに対する感度の高い人や若者が圧倒的に目立っていた。

 東南アジア地域でいますぐ日本車の販売シェアを奪うのはかなり難しいが、若い層を囲い込み、時間をかけて日本車を追い詰めていこうとしているようにも見えた。もちろんこの地域でも日本車がZEVで出遅れているなか、政府をはじめZEVへ熱いまなざしを送っており、韓国、中国メーカーがそれを意識しているのは間違いないだろう。

 日本は新型コロナウイルス感染拡大以降、ここ最近まで厳しい出入国制限を行い、その様子は鎖国とまでいわれた。しかし、世界に目を向ければ、コロナ後を見据え、やるべきことはやっていたのである。筆者は、日本の自動車産業にとってのコロナ禍の3年を「失われた3年」と呼んでいる。韓国や中国メーカーはコロナ禍でもASEAN(東南アジア諸国連合)地域で工場建設を行うなど積極的な動きを見せていた。このまま若い世代の囲い込みも加速すれば……、韓国や中国メーカーはしたたかに、そして近い将来へ向かい着実な動きを見せているのである


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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