成功続きにみえるトヨタにも苦労はある! 売れてなくても「存続必須」なクルマ3台 (2/2ページ)

伝統のあるクルマを残そうとする努力が見られる

 そこで開発されたのが新型プリウスだ。実用性は先に挙げたほかの車種に任せて、新型の外観は空力特性の優れたデザインを際立たせた。従来型に比べると、フロントピラー(柱)とウインドウは大きく寝かされ、全高は40mm低い。

 ハイブリッドも進化して、排気量は従来と同じ1.8リッター、動力性能に余裕のある2リッター、2リッター+PHEV(充電可能なプラグインハイブリッド)を設定する。PHEVには今年度で55万円の補助金が交付され、相対的に2リッターのハイブリッドは割高になる。従って新型車の売れ筋グレードは、1.8リッターとPHEVだ。

 クラウンをクロスオーバーに発展させた背景にも、プリウスに似た事情がある。2022年11月26日に掲載した「失速したクラウンを復活させる壮大な計画! 4車種投入と登場順序に隠れた巧妙な狙いとは」でも述べたとおり、クラウンの2021年の登録台数は1990年の10分の1だ。マークXなどと同じく廃止する方法もあった。

 しかしクラウンは伝統ある車種だから残す判断が下され、国内で販売するセダンから、海外にも投入できるSUVに発展した。しかも1〜2車種では販売が低迷する可能性があるから、合計4車種を用意する。クラウンもあとに引けないクルマだ。

 このほかトヨタにはセンチュリーもある。車内が超絶的に静かな高級セダンだが、今はプレミアムブランドのレクサスも国内で展開され、最上級セダンのLSも選べる。ブランドイメージでは、メルセデスベンツが一番上級と考えるユーザーも多い。

 そのためにセンチュリーは販売しにくく、2022年の1カ月平均登録台数は、約14台ときわめて少ない。しかし初代モデルを1967年に発売した歴史のある最上級セダンで、皇室御用達という側面もあるから引っ込められない。そこで現行センチュリーは、先代レクサスLS600h Lのプラットフォームとハイブリッドシステムを使って開発コストを抑え、価格は2008万円まで高めたが、採算をとるのは厳しい。

 今は日本で売られる小型/普通車の半数以上をトヨタ車が占めるが、必ずしもオイシイ商売をしているわけではない。やめるにやめられない、引っ込みの付かなくなった車種もあるのだ。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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