EV時代に日本車の牙城が崩される! 日本そしてアジアでも中国&韓国の勢いが止まらない (2/2ページ)

中国系メーカーが日本車をけん制!?

 2022年12月1日から12月12日、タイの首都バンコク郊外においてタイ国際モーターエキスポ 2022が開催された。タイはASEAN諸国のなかでも日本車天国とされている。2021暦年締め年間販売台数でみると、日系ブランドのシェアは85%以上となっている。しかしそのタイで、とくにバンコク首都圏など大都市では異変が起きている。それは中国系ブランドの存在感が急速に高まっているのである。筆者は今回のモーターエキスポ会場には訪れていないのだが、2022年春に開催されたバンコクモーターショーの会場を訪れている。コロナ禍前より上海汽車系のMGブランドがBEVをラインアップしていたのだが、バンコクモーターショーではGWM(長城汽車)がタイ市場にコロナ禍となってから進出し、広いブースを構えていた。そしてバンコクの街なかにはMGやGWMのBEVを結構な頻度で見かけることができた。

 そして2022年冬のモーターエキスポでは、さらにBYDがブースを構えていた。BYDは2022年8月にタイ市場への参入を発表し、同年9月にタイに工場建設を発表、2024年より年間15万台の乗用車生産を始めることも発表した。タイではモーターショー会場ベースでは、MG、GWM、BYDそしてNETA(ナタ)ブランドを展開する合衆汽車がタイ市場に、いずれもBEVをラインアップして参入している。そして合衆汽車は正式発表していないが、残り3ブランドはすでにタイでの現地生産を発表している(合衆汽車も現地生産へ向け調整中)。

 タイ政府としては、自国内でのZEV(ゼロエミッション車)普及だけでなく、いまのICE(内燃エンジン)車での車両生産拠点としての立ち位置をZEVの生産でも維持すべく積極的に完成車だけなく関連企業の生産拠点誘致を進めている。もちろん、タイ国内で生産されたBEVはタイ国内だけでなく、周辺国や欧州などへも輸出されることになるだろう。日本メーカーがマゴマゴしている間に、日本車最後の楽園といってもいいASEANでも、紹介した中国系メーカーだけでなく、韓国ヒョンデグループも加わり、日本車城の堀は確実に埋められようとしているのである。

 タイ在住の事情通は「BYDのタイ市場参入で確実に潮目が変わりました。中国や韓国系ブランドは新しい、逆に日本車はすべて従来どおり、すなわち古いという構図が鮮明となってきました」と話してくれた。MGやGWMでは、BEV以外にもHEV(ハイブリッド車)やICE搭載車もタイにて販売しているが、BEVをラインアップしていることもあり、日本車よりも先進性をタイの消費者は感じているようである。日本車もトヨタなどはタイでもHEVを積極的にリリースしている。しかし中国系メーカーもHEVを積極的にラインアップしており、この動きは筆者からすれば日本車をけん制しているように見えてならない。

 ちなみに、ヒョンデはすでにインドネシアで発表している、ASEANでの大ヒットモデル“三菱エクスパンダー”キラーとなる、スターゲイザー(ICE[内燃エンジン]搭載車)をモーターエキスポ開催のタイミングでタイ市場にてデビューさせ、会場で披露している。

 85%以上ものシェアがあるので、いますぐ中国・韓国系と日系メーカーの立場が逆転することはないだろう。しかし、タイ政府はZEVの普及だけでなく、現地生産にも前のめりになっている。しかし、日系メーカーはいずれも今すぐ対応するのは難しい。

 モーターエキスポ会場における各ブランドブースの面積をみると、日系最大はトヨタで1720平方メートルなのに対し、GWMは1806、BYDは1849平方メートルとなっている。個々のブランドの事情もあるので、展示面積がそのまま勢いを表すわけではないが、かつては日系ブランドブースばかりが目立っていた会場とは風景がかなり変わっているのは間違いない。

 バンコクモーターショー会場では、中国・韓国系ブースではバンコク首都圏在住の感度の良い人たちや、女性も含めて若い人を多く見かける一方、日系ブランドブースでは年配の夫婦などが目立ち、従来からの日本車ユーザーといった感じの人が多く、ある意味客層の違いというものを感じた。つまり、いますぐは何もないとしても、しばらくあとには、日本車の楽園の崩壊というのも十分ありえそうな状況であり、仮にタイでそのようなことが起こった時、日本市場でもまったく対岸の火事とは思えない事情になっている可能性は否定できない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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