ウデのない奴お断り! シエラRS500コスワースは「ジャジャ馬」だけど「バカッ速」クルマだった (2/2ページ)

36年前のホットマシンを蘇らせるプロジェクトも始動

 同じく1987年、シエラにはビッグマイナーチェンジが実施され、ここでコーティナ&タウナス以来となるミドルクラスの4ドアセダン、サファイアが登場。フォードはそれまで3ドアボディに設定されていたRSコスワースのベースモデルをこのサファイアに変更。さらに4WDの駆動方式を与えるという大胆な仕様変更を行った。それはスポーツカーというよりもむしろ高級車としての性格を、新たな4ドアのRSコスワース4×4に持たせるための策だったと考えるべきなのだろう。

 筆者は過去に数回、シエラRS500コスワースのステアリングを握ったことがあるが、それはきわめて刺激的な経験だった。エンジンはもちろん高回転型のセッティングで、中速域以降のエンジンスピードを外さないだけのシフトとアクセル操作を常に要求される。それにターボからの過給がフルで加わった瞬間の印象は、まさに加速Gとの戦いといった印象。

 225馬力といえば、最新のスーパースポーツと比較すれば他愛もない数字にほかならないはずなのだが、それはターボの特性によるものなのだろう。加えてコスワース製エンジンは、その実力を存分に楽しめるエリアがきわめて狭い。このモデルを自在に操るには相当なスキルが必要になると感じたことをいまでも覚えている。

 シャシーのセッティングもまた同様だ。いまとなってはハードなフットワークにもかかわらずダンパーのコントロールが素晴らしく、結果として理想的な路面の追従性を披露したという程度の印象しか覚えてはいないが、それもまたエンジンと同様に、シエラRS500コスワースは乗る者にそれなりのスキルを要求することは間違いない。

 そして最後にもうひとつ興味深い情報をお伝えして、この原稿を終えることにしよう。

 じつはこのシエラRS500コスワースが、英国のCNCモータースポーツAWS社によって、当時の仕様そのままに3台のみが限定生産されることになったのだ。この3台のRS500コスワースにはヒストリックレースに参戦するためのすべてのドキュメントが揃っているというから、実際にそれをサーキットに持ち込むことも可能。エンジンは当時のレース仕様と同等の、583馬力にまで強化されているという話だ。

 価格は発表時には21万6500ユーロとされていたが、RS500コスワースの希少性を考えれば、新車と同様のスペックと仕様で仕上げられるこのモデルは興味深い存在といえそうだ。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
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