世界中を見渡してもライバル不在! デリカD:5にあって他のミニバンにないものとは (2/2ページ)

7人乗車でも45度の登坂性能を誇る

 現行モデルは2019年に登場し、基本的骨格構造はキャリーオーバーしているもののクリーンディーゼルターボエンジンを搭載し、ステアリングをデュアルピニオン方式にするなど乗り味を大きく進化させていた。クリーンディーゼル化により大きな尿素タンクをリヤバンパー内側に配置したことでデパーチャーアングルは若干犠牲になったとはいえ、8速ATと低速トルクの大きなターボディーゼル採用により登坂性能は強力で7人乗車でも45度の登坂性能を誇るなどライバルを圧倒しているのだ。

 こうした独創性が人気を呼び、デリカD:3やD:2など他社からのOEMによるモデルを設定したが、三菱ユーザーの選択眼はシビアでD:5にとって変わる人気を得るには至らなかった。

 デリカ登場55周年となった2023年は軽自動車「デリカミニ」が新しく誕生し話題となっている。D:5登場初期のラジエターグリルをオマージュし、バンパーガードやフロアガードをイメージさせるフロントグリルまわりのデザインが逞しい。また15インチの大径タイヤを装着し160mmの最低地上高を確保しつつ4WDシステムを備えさせて悪路走破性をD:5ゆずりにするなど三菱自動車ならではのパッケージングとしているのだ。

 もちろん他社も技術的には最低地上高を高め、4WDシステムを組み込むことは可能だろう。しかし、それは多くのミニバンが美点としてきた低床フロアや乗降性を犠牲にしなければならず、また高い車高は重心高を高めて操縦安定性に影響を及ぼすので、まったくゼロから作り直すのに近い大幅改良を施さなければ成立しないだろう。

 それほどの投資をしてでも取り組むべきカテゴリーとして認知されるかどうかは今後のデリカD:5の市場人気を見届けなければならないだろうが、三菱自動車が築き上げたブランドイメージはそうした技術的アプローチだけでは語れないところにあるとも言える。雪国や東南アジアの悪路地帯などで獲得してきた技術と確たるイメージがデリカブランドの礎となっているのだから。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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