タイでも競争的価格で存在感をみせるBYDのEV! 優位性を見いだせない日本メーカーの不安 (2/2ページ)

日本メーカーは対策を急ぐべき

 つまり、今後日系メーカーでタイにおいて同クラス同タイプのBEVを出すことがあったとして、果たしてBYDやMGと同価格帯(450万円近辺)でラインアップすることができるのかということを筆者は心配している(日本メーカーではその価格帯で出すことは難しいのではと考えている)。残念ながら、ICE(内燃エンジン)搭載車生産での歴史に関係なく、むしろBEVの開発では中国系メーカーがリードしている。そのなかで、後出しでも『日本車だから高性能で、価格は割高』というのが通用するのかというのは甚だ疑問である。BYDは電池メーカーであり、すでに日本を含め世界各国にて乗用タイプだけでなく路線バスなど多彩なBEVを販売している。中国では共同開発ということでBYDモデルベースのトヨタブランドBEVがラインアップされている。そんななか「日本のBEVは高性能だから高いのです」とアピールしても、世界の消費者からはオーバースペックとも見られるなど、なかなか説得力があるともいえないだろう。

 少なくとも価格設定で主導権を中国系メーカーに握られた時点で、すでに日系メーカーBEVはタイではかなり後出しジャンケンでも不利な状況にあると筆者は考える。いまはタイでは中国から完成車を輸入して販売しているが、今後は順次タイ国内生産モデルとなっていくので、ますます価格面では日系メーカーは追い込まれていくかもしれない。

 これと同じ考え方は日本市場でも当てはまる。すでにATTO3が440万円で発売となった。MGは今年タイ工場を稼働させるとしているので、タイからの右ハンドルモデルを日本へ向けて出荷することも可能。BYDの日本市場での販売動向次第では新たな中国系BEVの上陸があっても不思議ではないだろうし、すでにそれは折り込み済みで中国系メーカーは動いているようにも見える。

 現状で日系メーカーの後出しジャンケンは、技術力で十分カバーできると考えている人も目立つ。しかし、ここまで出遅れが目立つなかで日本メーカーだけが持つ独自技術で中国系だけでなく、欧米や韓国メーカーですでに市販されている多くのBEVをあっと言わせるものを登場させることができるのだろうか。そして、日本車はいままでも実用車として世界で愛用されている状況を維持するならば、BEVでも中国や韓国系メーカーと割安感で勝負する道を選ばざるを得ないのだが、ある意味カローラクロスサイズでは少なくともタイや日本では450万円前後でATTO3などを上まわるモデルを出さないと、なかなか販売競争に参加することもできなくなるだろう。

 欧州のようにBEVなどゼロエミッション車以外販売禁止というのは極論としても、BEVの選択肢が圧倒的に少ない日本の消費者でさえBEVに注目している。そのなかで選択肢のひとつとしても、なかなか日系メーカーのBEVを選ぶことができないのが現状。路線バスでは日系メーカーの選択肢がないなか、中国系メーカーのBEV路線バスの導入が相次いでいる。この流れが乗用車でも顕在化してしまうのだろうか。少なくとも若い世代は、日本が工業立国で世界をリードしていたというのは歴史の1ページでしか認識していないので、韓国や中国メーカーの製品でも「コスパ」が良く感性に合えば躊躇なく選ぶので、モタモタしてられないと思うし、どんどん追い込まれているのは間違いないようだ。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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