この巨体でここまで走れるってマジか! アルファード・エルグランド・オデッセイの「ドレが一番スポーティか」決定戦 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■国産Lクラスミニバンは動力スペックなども高いモデルが多い

アルファードには3リッターV6モデル、エルグランドにはかつてNISMO仕様があった

オデッセイはスポーティすぎて後席の家族から乗り心地にクレームが入るほどだった

走りのパフォーマンスが高いミニバン3台を比較

 ミニバンに走りの良さを求めるのは無理? そう決めつけるのは間違いだ。

 もちろん、いま主流のボックス型ミニバンは背高ボディで重心が高く、両側スライドドアの装備によって車重は決して軽くはないから、ピュアスポーツカーのような走りの世界に期待するのはナンセンスだとしても、想像以上に活発かつスポーティに走ってくれるミニバンも世の中にはあるのだ。

 ここでは、その立派さ、室内空間の圧倒的な広さ、装備の豪華さを誇る国産ハイエンドミニバン、つまりトヨタ・アルファード、2022年9月にいったんその歴史を終えたものの、2023年内に復活するとされているホンダ・オデッセイ、そして日産最上級ミニバンのエルグランドの3台の走りについて、比較したみたい。

 この3台のなかでいま、圧倒的な人気、販売台数を誇るのがアルファード。かつては兄弟車のヴェルファイアがこのクラスの人気を牽引していたが、それが逆転したのは2019年のビッグと呼べるマイナーチェンジだった。ハイライトは先進安全運転支援機能の進化。

 普及を目的とし、今後、トヨタ全車に搭載予定の第2世代セーフティセンスを新(初)採用するとともに、3.5リッターV6エンジンも刷新され、海外では北米仕様のカムリなどに搭載されている直噴+ポート噴射D-4S、2GR-FEユニットに換装。最高出力/最大トルクは前型の280馬力/35.1kg-mから301馬力/36.8kg-mへと増強。ミッションは6速ATから8速ATへとアップグレード。

 動力性能の向上に合わせ、ブレーキはベンチレーテッドディスクを大径化し強化している。そのうえで、ヴェルファイアとアルファードの人気を逆転!? させたのがフロントマスクの刷新だ。エクステリアでは主にフロントマスク&リヤガーニッシュを変更し、よりワイド&ローを強調したデザインとなったのだが、そのマイナーチェンジで顔つきの変化幅がより大きく感じられたのはアルファード。

 もはや迫力、押し出し感では精悍な2段構えのヘッドライトを持つヴェルファイア以上という印象で、実際、マイナーチェンジ以降、アルファードの売れ行きが急伸したのだった。

 さらに、Aピラーとスライドドアまわりに構造用接着剤、およびウインドウを構造材にする高剛性ガラス接着剤を用い、乗り心地や操縦安定性にかかわるボディ剛性を強化。このクラスの高級ミニバン、大空間サルーンに不可欠な静粛性の向上にも手が入り、フェンダーライナーの吸音材張り付け、ダッシュサイレンサーの遮音用樹脂フィルムの多層化、ステップ部内部の2重シール材構造など、室内に侵入するエンジン、ロードノイズ低減を徹底しているのだ。

 そして走行性能、快適性の改善にも抜かりなし。2列目エグゼクティブラウンジシートの振動低減、ダンパーの新バルブ採用による乗り心地、操縦安定性の向上、さらに新3.5リッターV6エンジン搭載車のパワーステアリングに応答性を高めた専用制御を採用するなど、徹底した改善プログラムが盛り込まれているのだから、マイナーチェンジの域を超えたビッグチェンジだったというわけだ。

 で、そのビッグチェンジ以降のアルファードの走りはどうだったのかと言えば、2.5リッター直4エンジン+2モーター、システム出力197馬力のアルファードHVの場合、出足はもちろんモーター走行。パワーステアリングは軽く扱いやすく、2トンを超える車体を静々と滑らかに発進させる。エンジンは早期に始動するものの、静かなままモーターアシストによるトルキーで伸びやかな加速を披露。動力性能的には2.5リッター直4と後述する新3.5リッターV6の中間だが、パワーフィールとしては十二分。この巨体をスムースかつパワフルに加速させてくれるのだ。

 では、新エンジン搭載となった301馬力、36.8kg-mを誇る3.5リッターV6モデルの走りはと言えば、豪快、豪放とも言える速さと、重心を感じにくい操縦性、意外なほどねばるフットワークに持ち味がある。ある意味、高速道路や山道をそこそこスポーティに、活発に走ることが(大切な同乗者がいなければ)可能となる。

 そんなアルファードの陰に隠れてしまっている日産エルグランドは、いまもE52型として2010年に登場した3代目を化粧直しして生き伸びている、デビューからもう13年も経つ古参である。この世代でプラットフォームがやっとFF化され、発売当時はその先代に対する洗練度に感動したもので、世界初となる中折れ機能つきキャプテンコンフォータブルシートや電動3列目席格納機構の採用に驚かされたものだった。

 その標準車は、誤解を恐れずに言えば、アメリカンとも言えるクルーザー的ミニバンキャラクターではないだろうか。ハイブリッドを持たず、2.5リッター直4または3.5リッターV6ガソリンエンジンのみで勝負し続けているところも、ライバルとの違い(というか弱点だが)である。しかし、いまでは中古車でしか手に入らないNISMOパフォーマンスパッケージを組み込んだ(車両型式:DBA-PE52)なら話は別だ。

 19インチアルミホイール、ローダウンされるS-Tuneサスペンションキット、チューニングECM、S-Tuneスポーツマフラーなどが装着され、元来のリヤマルチリンクサスペンションのおかげもあって、乗り心地の良さとドライバーズカーとしてのファンな操縦性を両立。

 もちろんパワーユニットはVQ35DE、3.5リッターV6、280馬力、35.1kg-mで豪放にまわり、血の気が引くほどの加速力を見せつけてくれるのだ。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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