バッテリーが損傷すると「全損」になるから!? 「EVは車両保険が高い」という噂について考えてみた (2/2ページ)

すべてのEVの車両保険が高いとはいえない

 損害保険料率算出機構のホームページで調べることのできる「型式別料率クラス」というのは、車両型式ごとの保険実績に応じて保険料を区分している。つまり、過去に保険を使ったケースにおいて、修理代が嵩んだ車種や盗難被害の多い車種というのは料率が高くなる。

 なお、過去の実績ベースとなっているため、発売されたばかりのEVの数字を見ても意味がないだろう。販売されてからそれなりに時間の経過しているEVをピックアップして、型式別料率を調べてみたのが以下の一覧だ。

日産リーフ(初代) 8~10

日産リーフ(2代目) 12

テスラ・モデルS 14~17

テスラ・モデルY 13~14

テスラ・モデル3 13~16

 自家用普通乗用車・自家用小型乗用車はクラス1~17の17区分となっている。数字が大きいほど、車両保険が高いといえる。そして、グレードや仕様により料率は異なるが、たしかにテスラ車の型式別料率クラスは高めになっているのが見て取れる。モデルSに至っては最高料率となる17に区分されているグレードもあるほどだ。

 しかしながら、日産リーフの料率はけっして高いとはいえない。とくに初代の前期については型式別料率が中央値の8となっている。おそらく日本国内では保険適用の機会がもっとも多いであろう初代リーフが平均的な数値であることからすると、「EVで車両保険に入ると保険代は高額になる」という噂は、絶対的には正しくないといえる。

 もっとも、テスラの各モデルについては傾向として型式別料率クラスが高くなっているのは事実であり、ここにフォーカスすれば「EVの車両保険は高い」といえるが、リーフとの差を考えると、あくまで「テスラの修理代が高い」傾向にあると理解すべきだろう。

 ただし、その理由としてEVが高価なバッテリーを積んでいるからなのか、テスラの設計や部品供給に影響されているものなのか、型式別料率の数字だけでは判断できないのも事実。いずれにしても日産リーフの料率クラスからすると、少なくとも過去の実績としては「保険代が高くなるからEVを買うのは損」と考える必要はないといえそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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