電動化したら「存在価値」がなくならない!? 昭和のクルマ好きオヤジが心配するクルマ3種 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■電動化による重量増加はライトウェイトスポーツカーにはNG!?

■ランクルが電動化すると自身のコンセプトに反する?

■電動化=無音は五感を刺激しなくなる!?

ライトウエイトスポーツカーの電動化はデメリット多い!?

 地球規模で問題視されている「環境悪化」を解決すべく、各国のクルマメーカーと世界中のクルマファンが導き出した答えのひとつがBEVです。電気を使ってモーターを駆動して走るBEVは、走行中にCO2を一切排出さず、そもそも枯渇が心配される化石燃料を使用しないことも併せて、極めて地球環境に配慮した乗り物だからです。

 また、そうした環境性のメリットばかりでなく、BEVは “運転する歓び”もちゃんと持ち合わせているのです。アクセルを踏み込んだ瞬間から強力なトルクが立ち上がるというモーターならではの特性のおかげで、加速がすこぶるパワフルかつスムース! しかも、バッテリーを車体中央床下に搭載するBEVは重心が低くなるため、コーナーリング性能も素晴らしい!

 ……う〜む。地球環境を考えれば「BEVは絶対有り!」だとは思うんですが、もうひとつのBEVの魅力である「運転する歓び」という点においては素直に賛成できないのは、筆者だけでなく読者のなかにもたくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか。

 というのも、運転する歓び=スポーツカーとしての評価って加速性能とかコーナーリングの速さとかって数値で表せることばかりではなく、ドライバーが運転しているときに感じる心地良さとかクルマとの一体感とか、いわゆる概念的かつ心理的な要素も重要だと思うからです。

 この概念的・心理的なクルマの評価って、多くのモータージャーナリストや専門誌が「味」あるいは「フィーリング」という表現で40年以上も喧々諤々と語ってきましたし、アマチュアドライバーだってドライブ中に「うん、キビキビと走って気持ちいいね」とか「あらっ、エンジンの音が素敵」とかって言葉にしますもんね。つまり、それくらい人は運転している最中には「感覚」を大事にしているもんですし、その感覚はクルマの評価にとって大切なんです。

 そこでマツダ・ロードスターに注目。1989年にデビューしたマツダが製造・販売するオープンタイプのライトウエイトスポーツカーですが、発売初年時はたった半年で国内で1万台近くも売れ、翌年には全世界で9万台以上も売り上げた大ヒットカーでもあります。

 その人気の理由は、ロードスターがドライバーにもたらすドライビングプレジャーにほかなりません。その多大なドライビングプレジャーを生み出すのが、ロードスターの車重の軽さ! なにしろ初代モデルは3970×1675×1235mmというサイズ、940kg〜という車両重量なんですから、コンパクトな4気筒エンジンが発揮する必要にして十分なパワー(130馬力)でも楽しく走ることができたんです。

 現行モデルの4代目になってもサイズはあまり拡大せず、車両重量も1000kg前後をキープしています。だからこそ、ロードスターはキビキビと走り、その気持ちいいドライブフィールが操る人の感性を刺激。その刺激を全世界のスポーツカーファンが共鳴したからこそ、発売直後から爆発的な売り上げを果たしたのです。

 ところが、脱酸素に力を入れているマツダは、2025年にデビューが予定されている新型ロードスターも電動化するようです。すると、ロードスターの車体には思いバッテリーやモーターが搭載され、車重は一気に増大し、重くなったぶんを補強するためにボディは肥大し、さらに重くなってしまうことが懸念されます。

 ということは、まるで俊敏な野生動物が大地を駆けるが如く、あるいは鳥が自由に空を飛ぶようなロードスターのドライブフィールが、電動化によってあたかも家畜動物のようなダルくて鈍重な走りに変わってしまうかもしれません(泣)。重くてダルくて小気味良くない電動化ロードスターなんて、乗る人の五感を刺激しなくなりそうで心配です。

 同様なことがトヨタ86&スバルBRZにも起こり得ます。トヨタとスバルが共同開発したこの2台のスポーツカーは、低重心の水平対向4気筒エンジンをフロントに低く搭載したことによるダイナミックかつスムースなコーナーリングが魅力。ところが、デビュー当初からパワー不足が問われており、その改善策としてエンジンを2.4リットルに拡大して236馬力までパワーアップを敢行したのです。

 ライバル車が軒並み300馬力をオーバーしている昨今、86もBRZもさらなるパワーアップをしようとしても、エンジンルームのスペースに余裕がないためにターボを装着することもままならず、またパッケージングの都合上、直4エンジンやV6エンジンに載せ変えることも難しいことが判明……。そうなると、電動化=モーターのパワーに頼るしかない!? とトヨタとスバルは判断(したとかしないとか)。

 リヤタイヤの軸上にインバーター直結のモーターを、リチウムイオンバッテリーを車体中央の最下部に設置すれば電動化は可能らしく、そうしたパッケージングは低重心を売りにしていた86&BRZの走りのコンセプトを損なうことはないのですが……(重いバッテリーをボディ中央に低く搭載しているので)。いかんせん、バッテリーとモーターのせいで大幅な重量アップを避けることはできません。

 アメリカの機関のテスト結果によると、エンジン車が電動化することで生じる車両重量は、平均して2〜3割になるとか。ここ5年の電動化車種の重量アップは、平均500kgに及ぶとか。ということは、直4エンジンを積んだ約1300kgの86&BRZが仮に電動化したとすると、車両重量は一気に2トン近くになってしまうことも予想されます。

 う〜む、こんなに重くなってしまっては、せっかく低重心であっても気持ちいい走りを感じることはできそうにありません。


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