【試乗】同じ「クラウン」でもまったくキャラが違う! 従来のファンを感動させる「セダン」の乗り味と新しさを感じさせる「スポーツ」 (1/2ページ)

この記事をまとめると

クラウン第2・第3のバリエーションとなる「スポーツ」と「セダン」に中谷明彦が試乗

■「スポーツ」はやや固めの乗り心地ながらDRSによる優れた回頭性でスポーティな走りを楽しめる

■「セダン」はシリーズ唯一FRベースで、ドライブモードに「Rコンフォート」が備わる

クラウン第2・第3の矢は「スポーツ」と「セダン」

 2022年に第16代目へと進化した新型クラウンは、 はじめに「クロスオーバー」モデルを登場させ世間をあっと言わせた。それまでの伝統的なFRレイアウトを改め、横向きエンジンのFFベースでe-fourというパッケージングを採用して登場しただけに、大きな期待感とともに喪失感のようなものを感じた人もクラウンファンには多かったはずだ。

 そして新型クラウンには、さらにスポーツ、セダン、エステートという3モデルの追加が当初よりアナウンスされており、今回、そのなかのスポーツとセダンにいよいよ試乗する機会が得られたのでリポートしよう。

 まずはクラウンスポーツだ。誰もがそのデザインの格好良さに惹き付けられ、すでに販売も好調で受注停止状態にあるほどの人気を示しているという。

 実際、クラウンスポーツの外観デザインは非常にグラマラスで美しい。特徴的なのは、 短いホイールベース(2770mm)で、さらにやや車高を持ち上げてSUVとしての車格を与えられたスポーティなフォルムを形成している。前後のホイールアーチモールおよびフェンダーが大きく張り出して、そのなかに大径21インチのタイヤ/ホイールを収めている。

 このスタイリッシュな外観を実現するために、あえてショートホイールベースにしたというほどの熱の入れようであり、その結果、幅広のボディと短い全長による安定感を感じさせながら、一方でアジリティに富んだ機敏性を感じさせるスタイリングに仕上げられているといえる。

 今回試乗するモデルは、 2.5リッター自然吸気ダイナミックフォースエンジンにTHSハイブリッドシステムを組み合わせ、e-fourのeアクスルをリヤにも搭載した4輪駆動モデルである。

 この新世代クラウンは、フロント横置きFFエンジンベースのクロスオーバーと今回のスポーツ、そして間もなく登場するエステートもすべてeアクセルを搭載したe-fourモデルとして設定される予定である。

 また、クラウンポーツにはさらに 2.4リッターのガソリンターボチャージャードエンジンを組み合わせたハイブリッドのハイパワーモデルも追って登場する予定であり、ますます期待されていると言えるだろう。

 ドアを開けて室内に乗り込むと、12.3インチで横長の大きなセンター液晶モニターと、ドライバー正面に位置する液晶カラーのメーターがドライバーを迎え入れてくれる。

 ダッシュボードは左右非対称のデザインで、ドライバー方向に計器や操作スイッチ類が若干傾いて配置され、ドライバーオリエンテッドなコックピットを創出している。運転席につくだけでワクワクするような気分を感じるのは久しぶりのことだ。

 一方で、リヤシートに目を移すと、ショートホイールベースによりやや足もとスペースは窮屈そうに感じられるが、グラマラスなボディデザインゆえに後席ルーフ部分のヘッドクリアランスは十分に確保され、居心地の良さそうな空間が与えられている。

 例によって、スタートアンドストップスイッチを押しシステムを起動すれば、あとはシフトレバーシフターをDレンジに操作するだけで通常のTHS搭載車と同様に走り始めることができる。

 まずは電動モーターで静かに走り始める。 ドライブモードはエコ・スポ—ツ・ノーマル・カスタムと選択することができ、デフォルトではノーマル。また、任意に設定すれば、次の始動のときにはその設定が記憶されている。ノーマルモードやエコモードにおいては、走り始めは前輪の駆動モーターが主に稼働して動き始める(エネルギーフローモニターによれば)。また、スポーツモードを選択すると、走り始めから4輪駆動でパワー配分され、動き出しの制御が異なっていることがわかる。

 走り始めて感じるのは、21インチの大径ホイール/タイヤを装着したことで、路面の継ぎ目や段差などでゴツゴツとしたハーシュが伝わってくること。コンベンショナルなスプリングとダンパーユニットを組み合わせたサスペンションのダンパーチューニングをバルブによりセッティングしているが、作動初期のゴツゴツとした硬さを演出することでスポーツ性を感じさせるのが狙いにあるようだ。

 一方で、クラウンという車格の乗り心地を求めるユーザーにとっては、やや不快な乗り心地と言えなくもない。今回、試乗ルートが一般道の市街地ということで、交差点や路面の継ぎ目、補修痕などがところどころにあり、そうした場所を連続的に通過するとゴツゴツとした印象が強く残ってしまうのだが、 トヨタで開発をつかさどる匠ドライバーの弁によれば、ハイウェイやワインディングをある程度の速度でドライブしていると、非常に優れたロードホールディングと車両の安定性、そして快適な乗り心地が両立されているという。

 走行しながらスポーツモードを選択すれば、エンジンとモーターの駆動力ピックアップレスポンスが高まることがわかる。 また、電動パワーステアリングのアシスト特性も変化し、やや重めながらもクイックな操舵フィールとなるように設定されているようである。

 多少ゴツゴツとした印象はあるものの、全体としては静かで快適な乗り心地であると言えるし、また電動パワーレザーシートの座り心地やクッション性などにも優れ、フロント左右のシートヒーターやシートベンチレーションなど装備にもそつがない。

 どちらかといえばクラウンクロスオーバーのショートホイールベースバージョンのような位置づけといえ、アジリティに富んでいるのだが、その演出をさらに強めているのがDRSである。DRSとはダイナミックリアステアリングの略で、この新世代クラウンがクロスオーバーから採用し始めた先進的な装備である。市街地走行レベルでは常に逆相に後輪が操舵され、非常に回頭性に優れる。また、細い路地での切り返しやUターン、車庫入れなどにおいても実用性を高めていると言える。

 70km/h以上の高速域になると固定か同相の操舵制御となり、ショートホイールベースながら旋回安定性をより高めるセッティングとなっているのだ。このDRSを1度体験してしまうと、DRSなしのクルマでは物足りなく感じてしまうほど。扱いやすさに優れた装備であり、今後さまざまなモデルへの拡大採用が期待されているのだ。

 DRSの操舵方向および操舵角はドライビングモードによっても異なり、 スポーツとノーマル、エコなどにおいて、その作動方向、作動範囲は細かくプログラムされている。

 ハイブリッドのパワーユニットはすでにおなじみのもので、ドライブフィール上の違和感はなく、また制御プログラムも適正に設定されていると言える。 エンジンが稼働した際には2.5リッター4気筒エンジンのサウンドが室内に入ってくるが、その音質についてはスポーツと名乗る以上、もう少しスポーティな演出があってもいいと思えた。電子音を発生するほどの必要はないが、排気管やマフラーなどに工夫を盛り込み、スポーティなサウンドを聞かせるようになれば、より好ましい。今後、追加される2.4リッターターボエンジンのPHEV仕様については、そうした面も期待したいところだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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