クラウンもアルファードもN-BOXも質感が高まる! ヨコハマの新コンフォートタイヤ「アドバンdb V553」の進化にレーシングドライバーも舌を巻いた (2/2ページ)

すべての性能が大きく向上しているアドバンdB V553

 このクローズドコースでの比較だけでも、V553がいかに進化しているかを感じ取ることができたのだが、次は一般道を走って確かめてみる。

 まずV553を装着したトヨタ・プリウスで走ってみる。プリウス自体は走りの質感が非常に高く、またモーターで走り始めるため、とくに低速時の走行音の低い静かな乗用車であるが、V553を装着したことによって、さらにもう1ランク上のクラスのクルマに乗っているような快適な居住空間が得られていることがわかる。

 また、直進安定性やステアリング切り込みの応答性、旋回中に横Gがかかってコーナー外側の車輪に荷重がかかる際の撓みの少なさなども感じ取ることができ、プリウスの運動性能が1段も2段も上がったように感じた。

 今回のV553にはe+(プラス)という記号が加わった。これは電動化モデルにもマッチしているということを示していて、 プリウスやクラウンクロスオーバー、エクリプスクロスPHEVのように、電動化により車重を増したモデルにもマッチングして十分その性能を発揮させることができるということを象徴的に表している。

 その技術的手法のひとつは、 タイヤの構造部であるカーカスの左右ショルダー部に補強ベルトを巻くことでトレッド面の変形を防ぎ、またケーシング全体の剛性を高めていることによる。かつて、バブル期においてクルマがどんどん高性能化し、また車重も増えていった時代は、 タイヤの剛性がものすごく要求される時代でもあった。その要求を果たすべく、各メーカーはカーカスやコード類を補強し、左右のショルダー部にベルトを幾重にも配するなどして剛性向上に努めてきていたのだ。

 だがバブル経済が弾け、景気が悪化しコストダウンが大きく叫ばれるようになると、エコカーを中心に操縦性よりも燃費性能が求められるような時代になり、 コストダウンの意味も含めて複雑な構造が成りを潜め、固くてヒステリシスロスの少ないゴムが多用されるようになり、エコタイヤとしての燃費性能を上げてきていた。

 だが、近年の電動化モデルなどの登場によって車重がどんどん重くなり、さらに電動化で駆動トルクが大きくなっていることなどが重なり、V553はそうした大トルク、ハイパワー、そして高車重のクルマにもマッチするケーシング剛性が与えられたと解釈することもできる。

 次に三菱エクリプスクロスプリスPHEVに乗ってみると、まさにその効果は絶大で、 クルマの制音性能が向上し、EV走行しているときの静粛性が大幅に高まっていることがわかる。

 4輪駆動は本来直進安定性に優れているものだが、そこにさらにタイヤの直進性の良さが加わり、外乱に対して大きな強みとなって直進安定性を支えていることがわかった。

 コーナーにおいてもステアリングの応答性、またタイヤの歪みによるセルフアライニングトルクの操舵力変化などもなく、タイヤのケーシングは常に理想的な形状に保たれているということがわかるのである。

 その延長でトヨタ・アルファードにも試乗してみるが、さらに重心が高く車重も重いクルマであるにもかかわらず、タイヤのケーシングが負けていない。

 結果として車体のロールが減少し、クイックなステアリングレスポンスや、駆動トルク変化に対する応答性の高さも引き出すことができて、アルファードが軽快なクルマに感じられるほどであった。にもかかわらず、制音性能が高いこと、また乗り心地面もソフトで振動の収斂性が高く扱いやすいタイヤであることがわかった。

 最後に、V553を装着したホンダN-BOXに試乗してみる。N-BOXは軽自動車であり、これまでの普通乗用車とは異なり制約が大きい。ひとつには価格的な制約、またサイズによる制約などもある。

 V553は、サイズによってトレッドパターンや構造などを作り分け、ベストバイベストのバランスをタイヤと車間で取れるように作り込まれているという。そういう意味で、N-BOXとのマッチングにも興味があった。

 N-BOXは軽自動車のなかでも重心が高く、また車重も重いが、 従来の軽乗用車用タイヤだとタイヤ自体の撓みが非常に大きく、また軽量に作られていることもあってバネ下の安心感、重厚さが足りていない。その結果、クルマ全体の質感を損ねている面があった。

 V553を装着すると、タイヤの撓みが極めて少なく車両安定性を高め、またそれにより質感が大幅に向上していることがわかる。

 タイヤの撓みが少ないので、その分スプリングに応力がかかってくる。より固いスプリングを装着しても快適性は担保されるのではないかと思えるほどだ。

 また、高速で走っていてもタイヤの撓みから来るユニフォミティの変化がほとんど感じられず、真円度が高い状態が保たれていて、クルマ全体の質感が高まったように感じた。

 こういう乗り味であれば、普通乗用車から、あるいは高級車から軽自動車へ乗り換えても安っぽさなどを感じることなく、それまでの普通乗用車と同じような乗り味を得ることができ、満足度が高く得られるはずである。

 今回試すことができなかったウエット性能だが、社内評価では最上級のaランクを獲得し、また転がり抵抗面においてもAA〜Aを獲得していて、剛性の高さは転がり抵抗を低減させているということもわかる。トレッドゴムにはシリカをバランスよく配合し、ウエット性能を高め、また摩耗が進んでもシリカの含有量が大きく変化しない。トレッドパターンも摩耗に合わせて変化するなど、排水性能においても大きく低下しないような工夫が施されているのも注目に値した。

 値段的には従来のものよりも高価になるかもしれないが、それによって得られる満足度は非常に高いものがある。かつてバブル期に多くあったような上質なタイヤを求めるなら、アドバンdB V553をチョイスするのは賢い選択といえるだろう。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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