愛犬と暮らすいま「DOGファースト」なBEVが存在しない……【私がEVを買わない理由 青山尚暉編】 (2/2ページ)

DOGファースト故の選択

 モータージャーナリスト兼ドッグライフプロデューサーとしても仕事をし、2頭の犬と暮らすボクの家は、DOGファーストが基本。日々、愛犬をクルマに乗せる機会(ドッグランやドッグカフェ、動物病院への移動)が多く、また月に1度は愛犬とともに愛犬同伴型宿泊施設へとドライブ旅行に出かけている。

 そこで不可欠なクルマは、いまのBEVにはないステーションワゴンだと考えている。2頭の犬を特等席の後席に乗せ、夫婦で出かける際、ドッグカートを2組と機内持ち込みサイズのキャリーケースを積み込むためには、それなりのラゲッジスペース(とくに奥行と高さ)が必要だ。

 これはセダンタイプ、ハッチバックタイプではなかなか難しい。BEVに多いSUVでもよさそうだが、わが家の女性陣からは「けっこう重いドッグカート(12kg程度)を載せ下ろしするには、ラゲッジスペースのフロアは低ければ低いほうがラク」という意見がある。

 ちなみにSUVのラゲッジスペースのフロア地上高平均値は700~800mm。対するステーションワゴンの同平均値は620mm前後。重い荷物の積載性では、ステーションワゴンが圧倒的に有利だ。

 加えて、わが家のステーションワゴンは全高1485mmで、出先の駐車場制限もない。先日も、すべてのコンサートに訪れている松任谷由実さんのアリーナツアーに参戦するため、横浜のぴあアリーナにクルマで早めに出かけたのだが、すぐとなりの平面駐車場はすでに満車。で、歩道橋を渡るだけでぴあアリーナにアクセスできる機械式駐車場に止めたのだが、全高制限は1550mmでセーフ。もしSUVだったら、クルマを止めるのに苦労し、開演に間に合わなかったかも知れない……なんていうこともあったりする。

 だからいま、ガソリンターボのステーションワゴン=VWゴルフ7.5ヴァリアントマイスターに乗っている最大の理由は、そのクルマがボク自身とわが家にとって比較的コンパクトなサイズを含め理想的なステーションワゴンだからにほかならない。

 歴代ゴルフが世界のコンパクトカーのメートル原器であり続けている1台であるのはよく知られた話だが、ここ数年に登場した国産コンパクトカーやミニバンが、ゴルフ7.5をベンチマークにしている……と開発陣から聞かされたこともあるほどの、自動車開発者をも唸らせる傑作でもあるのだ。当然、自身のコンパクトカー評価のひとつの基準にもなっている。高速道路7一般道3の割合で走っては20km/L前後という実燃費の良さも大いに気にいっているところだ。

 もちろん、それだけではBEVに乗らない理由にはならない。これまで、すでに説明したように、BEVで愛犬とともにドライブ旅行(取材)に出かけたことは何度もあるが、春、秋、晴れや曇りの日ならBEVでもまったく問題はない。

 しかし、夏、冬、雨天となると、ちょっと困ることもある。それは途中充電で、充電中、高速道路のサービスエリアや道の駅などで30分程度、人間だけなら涼しく、暖かい施設内でカフェタイム、ランチタイム、あるいはショッピングタイムとして時間をつぶすことができる。が、犬連れだとなかなかそうはいかない。

 ほとんどの場合、テラス席までしか利用できないからだ。とすると、夏は暑さ、冬は寒さ、そして雨に耐えながらの外での充電待ちということになる。これは人にも犬にも厳しい(ドッグランがあれば30分、時間をつぶすことはできるが)。

 BEVで愛犬とドライブ旅行に出かける際、わが家がよく行く軽井沢の往復+現地ドライブ(約400km)を無充電でこなせるクルマなら文句なしだが、大きく高価でわが家としては対象・予算外。とはいえ、200km無充電で走れれば、目的地充電が可能な愛犬同伴型宿泊施設を選ぶことで解決できるものの、充電設備が複数完備された(といってもほとんどは200Vの設備だが)愛犬同伴型宿泊施設はまだごく一部でしかなく、ドライブ旅行先が制限されてしまう(楽天ステイ八ヶ岳であれば全室に200V、楽天ステイ鴨川も数台の200V充電設備がされているので行きやすい)。

 よって、わが家としては、いま乗っているガソリンターボ車に満足しつつ、BEVは近距離専用車として、たとえば日産サクラなどをセカンドカーとして使いたいとも思うのだが、2台持ちとなると今度は自宅の駐車場事情と兼ね合わなくなってしまう(2台分あるが、1台分は借り出した試乗車用)。

 いずれにしても、いま乗っているガソリンターボ車は、自身にとって理想かつ「最後の純ガソリン車」として、しばらくは大切に乗り続けたいと思っているが、次期愛車がBEVになるかは、愛犬と暮らす生活が続く限り、わからない。比較的コンパクトなPHEVのステーションワゴンがあれば、きっとそれがドッグファーストなわが家にとっての現実的な理想の愛車=ドッグフレンドリーカーになるのではないかとも思っていたりはする。

 とはいえ、それはあくまでもわが家で「愛車として使う」上での考え方(事情)であり、仕事としてのBEVに対する評価軸とはまったく関係ないことをお断りしておきたい。BEVの静かでスムースな走行性能に関しては、聴覚に優れ、車内でどこかにつかまれない犬にとって理想的であることを経験上、熟知しているし、わが家の歴代「自称自動車評論犬(!?)」の犬たちも、BEVをドッグフレンドリーカーとして大いに気にいってるのである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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