SとかEとかは知ってるけど「Lシリーズ」ってなんだ? メルセデス・ベンツの「愛され系商用車」のたまらん魅力 (2/2ページ)

ファニーな見た目からは信じられないほど実用的

L406 1966年

 シングルキャビンのトラックですが、グラスエリアが広くとられていることにご注目。Lシリーズの車体サイズはヨーロッパサイズでそこそこ大きいのですが、当時のカタログによると「視界が良好なので狭い道も安心」とのアピールがあります。こちらのサンプルを見れば、湾曲ガラスがサイドまで広がり、ピラーによる死角を徹底的に排除していることがうかがえます。

 1.9リッターのディーゼルエンジンを搭載していますが、こちらは乗用車の180Dからの流用。およそ43馬力程度の出力とされています。また、こちらのサンプルはポーランドでつい先日まで稼働していたらしいのですが、フロントバンパーが欠品していますね。

 ちなみに、先の407はガソリンエンジンの呼称、対するディーゼルは405、または406、408と呼ばれているのですが、このあたりの規則性はわりとアバウト。1930~40年代は出力と重量を表記していたのですが、この年代では適用されていないようです。

 なお、こちらの価格は要レストアという状態で8050スイスフラン(約140万円)という落札価格。日本の軽トラもいいですが、メルセデス・ベンツのレトロなトラックも魅力的です!

L408エルンスト・アウヴェルターバス 1972年

 Lシリーズのベアシャシーに、ドイツのコーチビルダー「エルンスト・アウヴェルター」が14人乗りバスを架装したモデル。観光バスらしく、360°に広がるガラスエリアやルーフに設けられた明り取りウインドウ、そしてボディ同色にペイントされた3面アクセスパネル付きのトレーラーは、現代の目で見ても魅力的なツアラーかと。

 1973年モデルで、エンジンは3.8リッターの4気筒ディーゼルエンジンを搭載。85馬力を発揮するといいますから、アウトバーンをかっ飛ぶわけにはいかないでしょうが、当時のツーリズムにとって過不足はないのかと。

 ペイントやインテリアなど見事なコンディションですが、2015年から5年をかけてレストアされたとのこと。メルセデス・ベンツ純正パーツはともかく、バス会社の専用パーツには苦労した模様。また、12VのソケットやUSBまで追加されているのはコンクール出品だけでなく、実用ツアラーとしてガシガシ乗れ! というメッセージでしょう。

 むろん、お値段も10万4650スイスフラン(約1700万円)と、それなりの落札価格。もっとも、現代のゴージャスなキャンピングカーとさほど変わらないので、14人乗ってキャンプにも出かけられると考えたらお買い得かもしれません。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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