自動車メーカーが純正採用する高級オーディオってどんな特徴がある? 元プロミュージシャンが徹底解説! (2/2ページ)

プレミアムサウンドメーカー製のオーディオは別格!

●Harman/Kardon(ハーマンカードン)

 ハーマンカードンはアメリカのスタンフォード、コネチカット州で1953年設立された最先端オーディオ技術と洗練されたデザインで名をはせるブランドであり、ダイナミックなサウンドが特徴。ラグジュアリーで彫刻的なスピーカーでも有名で、なかでも「Sound Sticks」は、MoMAの永久コレクションにもなっているほど。

 自動車用プレミアムサウンドシステムの純正採用例ではスバルを始め、マセラティ、アルファロメオ、クライスラー、スバル、VW、BMW、ミニ、ボルボ、ルノーなどに及ぶ。

 面白いのは、トヨタbZ4Xとスバル・ソルテラの兄弟車が、それぞれJBL、ハーマンガードンを採用していること。実際に同日、同場所でbZ4Xとソルテラのプレミアムサウンドシステムを比較視聴したのだが、筆者の好みは、とくに低音の聴かせ方でハーマンガードンのほうだった(※音の好みは人それぞれで、優劣ではない)。

 なお、筆者がホームオーディオ、カーオーディオの試聴用に長年用いているのは、リッキー・ピーターソンの「SMILE BLUE」というアルバムの1曲、「What You Won’t Do For Love」。これは、かつて某、日本のトップシンガーソングライターのコンサート会場で、大物プロデューサーが音響を確認するために使われていたトラックでもあり、使われている楽器の多さ、こだわりあるステレオ感、ワイドレンジ、強いアタックなど、コンサート会場の音場を創り上げるのに最適な曲である(と、プロデューサー本人に聞いた)。

 じつはその曲、下手なカーオーディオでは、録音されているすべての楽器が聴こえてこない、あるいはステレオ感が伝わりにくいという意地悪な曲でもあって、だから筆者自身の基準試聴曲として重宝しているのである。

●Mark Levinson マークレビンソン

 1972年に設立された、ハイエンドオーディオの世界で知らない人はいないアメリカのハイエンドオーディオブランドが、マークレビンソン。プロオーディオのプリアンプがそのスタートで、以来、ホーム用のハイエンドオーディオとしても確固たる地位を築いてきた。2001年にはレクサスとの協業を発表。レクサス車のプレミアムサウンドシステムを担うことになった。

 このほかにも、1925年にデンマークで創業した高級オーディオブランドのBang & Olufsen/バング&オルフセン(アウディ、ベントレー、ランボルギーニ、アキュラなどが採用)、フランスに本拠を置く、家庭用およびマルチメディア用のスピーカー、自動車用オーディオシステム、レコーディングスタジオ用のモニタースピーカー、ヘッドフォンを生産しているFOCAL/フォーカル(プジョーなどに採用)、大迫力のドンシャリサウンドでも定評あるアメリカの音響機器メーカーのrockford fosgate/ロックフォードフォズゲート(先代アウトランダーに採用)など、さまざまな車載用プレミアムサウンドシステムメーカーがある。

 ちなみに現在、筆者が車内で聴いているプレミアムサウンドシステムは、VWの一部車種にOP採用されていた1977年創業のデンマークの高級スピーカーメーカーのDynaudio/ディナウディオだ。

 プレミアムサウンドシステムの実力を自身の愛車で身をもって体感したのは、同じ車種の標準スピーカー搭載車(2014年型VWゴルフ7ヴァリアントハイライン)から、Dynaudio/ディナウディオプレミアムサウンドシステムをOP装着した同型車(2020年型VWゴルフ7.5ヴァリアントハイライン マイスター プレミアムサウンドシステム”DYNAUDIO”パッケージ装着車)に乗り換えたときだ。

 CD、SDカードを介した音源はもちろん、ラジオから流れてくる言葉、音楽もまた、まったく異なって聴こえてくる。例のリッキー・ピーターソンの音源で視聴したのだが、総出力400W、10チャンネル、9スピーカーの構成で、ラゲッジルームの下にサブウーハーが搭載されていることもあって、音のダイナミックさ、繊細さ、音の広がり、高音、中音、低音のそれぞれの聴こえ方のバランスは見事。すべての音源の輪郭がはっきりしていて、ボーカルはまるですぐ目の前で歌っているようだし、ギターやベースの奏者の指で弦をなぞる様さえ再現してくれるのだから、音楽好きにはたまらない。Dynaudio/ディナウディオを装備したクルマを手に入れてからは、わが家の理想的リスニングルームは車内になったのである。

 さて、冒頭で、音楽ファンがいい音で音楽を聴くには、標準装備の純正オーディオシステムでは物足りないはずだ(例外あり。後述)と記したが、例外あり、というのは、マツダがMAZDA3で採用したMazda Harmonic Acoustics(マツダ・ハーモニック・アコースティックス)と呼ばれる純正カーオーディオのこと。

 DSP(デジタル・シグナル・プロセッサー)の導入から、アンプ、3リットルの容量を持つカウルサイドスピーカー(CX-60は4.8リットル)に代表されるスピーカーの取り付け位置にまでこだわった、マツダ渾身の純正カーオーディオなのである。ダイナミックレンジの拡大で、追加料金なしの純正カーオーディオとは思えない音のよさを創り出している例もあるということだ。

 最後に、プレミアムサウンドシステムのメリットついて。それは、車種専用に開発、チューニングされ、アンプ、スピーカーにコストをかけていることから、車種ベストな音を、新車時からまったく手を入れずに楽しめることに尽きる。クルマのなかでいい音で音楽を聴きたい……という音楽好きの要望を、もっとも手軽に叶えてくれる方法が、プレミアムサウンドシステム装着車を手に入れることだ。

 当然、多くの場合、OPとなり、それなりの出費は必要だが、家でハイエンドホームオーディオを揃えるよりはリーズナブルだろうし、そもそも家にリスニングルームがないのであれば、いまのわが家もそうだが、車載プレミアムサウンドシステムの選択は大いに価値あるものだと考える。結果、クルマに乗る楽しみ、ドライブする楽しみの幅が(渋滞時を含め)大きく広がるはずである。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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