かつてはレースもラリーも命を失う事故が頻発! 「安全になった」と思われるいまでもレーシングドライバー目線では危険な改善点が多数存在する!! (2/2ページ)

コースの安全性は飛躍的に向上するも課題あり

 危険度の高さで知られる鈴鹿サーキット130Rや富士スピードウェイ100Rは、現在では改善され、安全性は圧倒的に高くなった。しかし、安全性が高まるとドライバーはより無理をして速く走ろうとするため速度が上がり、クラッシュが発生すると大事故になる。近年、トップフォーミュラやGTカテゴリー、ツーリングカークラスでも大きなアクシデントが発生していて、コースの安全性向上だけではリスクはなくならないことが指摘されている。

 富士スピードウェイでは、場内のあらゆる場所で規定値を超えるGショックがアクシデントで発生した場合、自動的にドクターヘリが飛んできてくれる運用がなされている。それでも複数台が大クラッシュした際には十分とはいえないだろう。

 F1を初めフォーミュラカーで実装が進んでいるHaloやホイール脱落防止ワイヤーの装着など、レーシングマシンの安全性は大きく改善されている。ドライバーにHans(ヘッド&ネックサポート)装着を義務付けるカテゴリーも増えた。

 コースの改良、改善も進み、救急体制も日々進化している。重要なのはそうした安全システムを機能させないように、ドライバーが安全第一のドライビングを心がけ、メカニックも安全に対するメンテナンスを徹底すること。レース主催者、観客も安全を最優先に運営、観戦を行なうべきだろう。

 補足で言えば、4点式シートベルトは安全性にはあまり寄与しない。前面衝突時にはバックルが腹部に食い込み内臓破裂を引き起こす危険性がある。5点式以上の固定方式を義務化する必要があると考える。

 また、近年スポーツ走行などでの事故が多発していて、死亡事故も頻発している。グループAのレースカーより遥かに速いノーマルスポーツカーが数多く登場していて、ライセンスがあれば誰でもサーキットを走れてしまう。

 250km/h以上の速度からハードブレーキをすれば、スーパーカーでも2〜3周しかもたない。クーリングラップを挟んでアタックすべきだが、そうした知識が広く共有されていないのは危惧される状況なのだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
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趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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