コロナ禍で発生した半導体や部品供給の遅れは解消している! それでも新車の納期遅延や受注停止がなくならないワケ (2/2ページ)

受注停止の背景には車種ごとに異なる事情がある

 ランドクルーザー300は、発売時点で開発者が「もっとも多く供給する地域は中東で、生産総数の50%以上になる。そこにオーストラリアなどを加えると90%に達して、日本の販売比率は10%以下に減ってしまう」と述べた。そのために長らく受注が止まっている。

 ランドクルーザー250は、国内比率が300よりも高いといわれるが、70も含めて2025年8月上旬時点では購入できない。アルファード&ヴェルファイアやランドクルーザー250では、定額制カーリースのKINTOは利用できるが、契約期間が満了になれば車両を返却しなければならないから、購入ではない。

 ジムニーノマドも停止しており、増産に踏み切ったものの、受注の再開は2025年の末から2026年の前半になりそうだ。スズキは以前から自社商品の販売目標を少なく設定する傾向がある。台数を多く見積もって実際の売れ行きが目標に届かないメーカーは多いが、スズキはその逆だから珍しい。また、シビックタイプRは生産規模が小さすぎて受注が停止している。

 このように、納期が遅延したり受注が停止する理由はさまざまだが、ユーザーに多大な迷惑をかけることは共通している。いまは新車需要の約80%が乗り替えに基づくから、納期が延びると下取りに出す車両の車検を取得して乗りつづける必要が生じる。しかも、納期遅延によって使っている車両が初度登録されてから13年を超えると、自動車税や自動車重量税が増税されてしまう。

 商品力は車両本体だけでは決まらず、納期も含まれるため、遅延すれば商品力を下げる。さらに受注が停止すれば、その車種は存在しないのと同じだ。

 人気車が納期を遅延させたり受注を止めると、中古車価格が新車価格の1.5〜2倍に達して、流通が混乱する事態も招いている。直接の責任は転売業者にあるが、納期が遅延しなければ、転売も中古車価格の高騰も生じない。メーカーは新車を販売する以上、適切な納期で納車できるように生産体制を整えねばならない。


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渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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