便利さの裏にある責任とリスク
インドネシアでライドシェアを利用すると、シートベルト(後席)の装着が困難な車両が多い印象を受ける。バックル(差し込み口)がシートの奥に潜っていたり、バックル自体が壊れていて装着できないのである。最大手のタクシー会社では、年季の入った車両でもまずそのようなことはない。そのあたりも飲み込んで利用する。つまり、何があってもある程度自己責任というものが問われてくるのはサービスの制度上仕方のないことなのだが、日本ではいったん何かが起これば「犯人捜し」、つまり誰(どこ)に責任があるのかが大きく問われることとなる。
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何ごとにも監督官庁が強い権限をもつのが日本、当然責任の矛先は当事者以外に監督官庁に向けられることも目立つ。このような利用者側の事情をみると、海外のライドシェアをそのまま採り入れるのはなかなか難しいし、監督官庁がそれを許さないのがいまの日本だと筆者は見ている。
ちなみに調べてみると、タイでは対人賠償の上限補償額は200万円ほど、死亡時でも300万円強しか支払われないとのこと。タイに限らず新興国での保険の相場はだいたいこの程度だと聞いている。この状況を「死に損」と表現した人もいる。こんな状況でもあるから、現地日本人駐在員の多くは、専用運転手を備え保険などもしっかりした社用車で移動している。
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筆者も「何かあったら……」と考えながら常に利用している。過去にはタクシーに乗っていたら後続車から追突、高速道路上で車両故障で長時間立ち往生など、さまざまなシチュエーションに遭遇したことはあるが、追突されたときはドライバーに「ここから歩いて帰れ」といわれただけだし、立ち往生のときは故障車両の修理手配が優先され何時間も付き合わされることとなった。日本ではさすがにここまで乗客が放置されることはないし、もし筆者のような体験を乗客がしたら重大事案発生となってしまうだろう。
海外の制度をそのまま導入すれば、プラットフォーマーはマッチングサービスを行っているだけなので、事故などが発生すればその解決が面倒となるのは自ずと見えてくる話。日本型ライドシェアは、この面倒を回避するために、タクシー事業者の管理下におき、ドライバーはタクシー事業者が雇用することとなっている。
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すでにアメリカあたりではライドシェアが安い移動手段ではなくなっているが、新興国でタクシーサービスが機能している国ではまだライドシェアのほうが安い移動手段となっている(繁忙時間帯はダイナミックプライシング採用により微妙)。同じような移動手段で料金に差がつくということは、どこかのリスクが増していると考えるのが自然の流れといえるだろう。
日本で海外のようなライドシェアサービス導入には法改正や規制緩和など、かなりの荒技を駆使する必要があるので、「天の声(政治介入)」でもない限りは、まず海外のライドシェアサービスがそのまま導入されることは夢物語である。